Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

新兵器の初期不良

 以前紹介したこともある米海軍の新鋭駆逐艦「ズムウォルト」が、こともあろうにパナマ運河で航行不能になったという。サンディエゴを出航し、東海岸の第三艦隊に配属されるための航行中エンジンに不具合が起きた。駆逐艦とはいうものの満載排水量14,800トンは、第二次世界大戦前の基準なら重巡洋艦を超える大きさ。ドイツのポケット戦艦グラーフ・シュペー(満載排水量15,900トン)並みの巨艦である。

 3隻建造されるうちの1番艦でもあるし、こういうトラブルもある種のステップと思う。あらためて諸元を見てみると、原子力推進ではなく機関はガスタービン発電機である。47,000HPのものが2基あってこれが主な動力で、その電力で電動機(2基)を動かしスクリューを回す仕組みだ。特段変わった仕掛けではないように思うが、何がトラブルの原因だろうか。

 新兵器の初期不良というのは、いくらでもある。

 ヒトラーが大きな期待を寄せた中戦車「パンテル」の初期型は、足回りに問題があった。重量が重くなりすぎていたのにそれに見合った改良をしなかったようで、トランスミッションが壊れてしまう故障に悩まされた。放棄車両の多くが、減速ギアの損傷で戦闘不能になったものらしい。

 

        f:id:nicky-akira:20190428102557p:plain


 日本海軍の零式艦上戦闘機も、(こちらは)軽量化のツケで降下時に主翼の強度がもたず、事故が発生した。この問題には十分な改善は施されず、量産機でも急降下で速度が増すと主翼にシワが寄る現象が出た。一撃離脱戦法で急降下して逃げるP-38などに零戦が追いつこうとすれば、自ら空中分解する危険性もあったわけだ。
 
 米陸軍の小銃M-16は、プラスチックを多用し軽量化に成功している。弾丸も従来の7.62mmから5.56mmにしたので、携行弾数も増やすことが出来る。8発装填の半自動小銃M-1ガーランドは4.3kg、20発装填の全自動小銃M-14は4.5kg、M-16は30発装填の全自動で3.5kgと軽い(いずれも未装填での重さ)。しかし、思わぬところに欠点があった。

 小銃には、銃剣を付けての白兵戦をすることもある。この時プラスチックの銃床(肩当てのこと)で敵兵を殴ると、折れてしまうことが続発した。ジャングルで不意の遭遇戦になることも多いベトナム戦争で、前線の兵士はM-16に不良品のレッテルを貼ったという。ズムウォルトはサンディエゴに回航されるようだが、過去にはそのまま二度と外洋に出なかった軍艦もある。さて、どうなりますか。
 
<初出:2016.11>