Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

白兵戦教練は必要か?

 安倍政権になってから、政治が右傾化しているというメディアがある。自衛隊の海外派遣や集団的自衛権の容認、今国会の焦点である「テロ等準備罪」などを例に挙げている。僕はこれらの例をもって「右傾化」とは言えず、普通の国家としてあるべき方向だと思っている。そんな僕も、少し疑問に思う報道があった。

 
 
 仮に政権が「右寄り」だとしても、「銃剣道」を義務教育に取り入れるように指示したとは思いたくない。文科省の官僚の「忖度」なのだろうか?

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 子供のころ「銃剣道」とは、柔道と剣道をまとめた言葉だと思っていた。上の記事のようにライフルに銃剣を着けたもので相手を突き倒すスポーツ(?)だと知ったのは、高校生になってから。第二次世界大戦前(明治憲法下)の日本では、教育の「正式種目」だったようだ。
 
 銃が導入される前は、洋の東西を問わず弓と槍が主な兵器だった。施条(ライフリング)を切った銃が出てきて弓は必要なくなったが、白兵戦ともなれば槍は欲しい。そこで銃に銃剣(バヨネット)を着けて槍のように使うことにした。ちなみに中国語では、銃の事を「槍」と書く。拳銃は「短槍」である。
 
 銃剣をどのような形状にするかは、各国の軍事思想によって変わってくる。イギリス軍は、スパイク状の突くだけのものを制式とし、アメリカ軍はコンバットナイフを銃の先端に着けるようにした。
 
 特徴的だったのは大日本帝国陸軍、他国に類を見ない長さの脇差しのようなものを使っていた。俗に「ゴボウ剣」と呼ばれたように、立派な剣である。銃口に付けるのでソリはなく、ゴボウのように真っ直ぐだったが。
 
 精神主義が蔓延していた帝国陸軍将兵は、弾薬等の補給が十分でなかったせいもあって白兵戦を多用した。中国兵などが相手だと日本軍が突撃するだけで逃げてくれるので有効な戦術だったが、機関銃・自動小銃・半自動ライフルが行き渡った米軍相手では損害を増すだけだった。
 
 それから70年あまり、白兵戦そのものは無くなっていないのだが銃剣の出番は間違いなく減っている。銃剣とならんで銃床で殴りつけるのは有力な白兵戦術だが、M-16のプラスチック銃床は垂直に叩きつける以外の使い方はできない。AK-74なども折り畳み銃床となり、白兵戦の優位より携帯性を重視している。
 
 そんな時代に自衛官ならともかく、中学生に「銃剣道」を習わせるとはいかにもアナクロではなかろうか。
 
<初出:2017.4>