Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

音楽チケットの転売(1)

 コンサートチケット等の高額転売が、エスカレートしているらしい。9,800円のチケットがネット上で50万円にもなって取引されているとの報道もあった。これに対し音楽関連団体は、100組を超える有名アーティストの連名を添えて「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」と、全国紙に全面広告を出した。

 
 彼らは、転売目的でチケットを買占めている個人・組織が存在すること、本当に音楽を楽しみたい人の機会を奪っていること、偽造チケットなど(あからさまな)犯罪行為もあることなどを反対理由として説明している。映画はフライトで見るだけ、音楽はCDで(もしくはYou-tubeで)聞くだけの僕としてはあまり興味のある話ではなかったが、チケット転売側の話を聞いて調べてみることにした。
 
 転売サイト最大手の「チケットキャンプ」は、今はミクシィの子会社である。すでに登録会員は200万人を越え順調に業績を延ばしている。ミクシィの役員が「悪質な転売には対応している。何が「高額」なのかを話し合いたい」と、通常の取引だと主張している。確かに、違法性は認めにくい。
 

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 売買は契約によって成り立ち、そのチケットが違法カジノの入場券のような場合を除けば、取引内容がどうであっても違法ではない。一番近いのは「ダフ屋規制」だが、これも国の法律ではなく地方条例だ。東京都の例では、迷惑防止条例で規制している。
 
◆公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
 第2条(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
 対象:乗車券他運送機関利用権、入場券等:娯楽施設利用権
 行為:不特定のものに転売目的で、公共の場所をうろついたり声を掛けたりすること
 
 というのが犯罪を構成する要件らしい。これが公衆に著しく迷惑をかける行為というのは、現代の日本人では理解できないだろう。転売によって不当な利得を得たことを犯罪としているわけではないのだ。調べてみると第二次大戦後の混乱期に、庶民の生活を守るために作られた条例であることがわかった。食料の買出しに地方に出かけないといけない都会の人にとって、列車の乗車券は命綱、これが買い占められては「著しい迷惑」というわけ。
 
 この規制、統制経済時代の色が濃い、恐らくは不要に近い条例だと思われる。「不要」ではなく「不要に近い」と言ったのは、ダフ屋行為が暴力団の資金源になる可能性があるからだが、昨今の「法律に規定された暴力団」には他の規制もあるし、やっぱり「不要」かもしれない。その上今回の高額チケット転売は、この条例でも罪には問えないと思う。それは取引がサイバー空間で行われていて、転売者は「公共の場をうろついたり」していないからだ。
 
<続く>