Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

トランプ先生の軍事学講座

 相変わらずトランプ大統領ツィッター広報はやむ気配がないが、一方で何も言わないで突然ぶん殴ることもあることが分かってきた。就任早々の1月29日、イエメンで「アラビア半島のアルカイダ」に対して掃討作戦を実行した。25名以上の民間人が(巻き添えで)死亡し、米軍特殊部隊シールズの指揮官が戦死したほか6名の負傷者を出した。

 
 
 さらにアサド政権がサリンとおぼしき化学兵器を使用したと聞くや、59発のトマホーク巡航ミサイルを撃って空軍基地を破壊した。習近平とのディナーの席で、デザートを食べながら攻撃したことを伝えたという。そして、アフガニスタンでは大規模爆風爆弾を「試し撃ち」している。

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 これなどは「軍産複合体」へのボーナスとも言うべきものだ。僕は賞味期限真近のトマホークを撃ったり、実戦使用されていない新兵器を試して、補充の発注をしやすくしたのだと思っている。
 
 トランプ大統領はその一方で、ビジネスマンらしくコスト削減の意識も見せている。新鋭ステルス戦闘機F-35があまりにも高価だということで、「同程度の(能力の)
F/A-18ホーネットのコストをボーイングに問い合わせた」と言っている。
 
 ビルを建てるデベロッパーは、調達コストに特に厳しい。かつて六本木ヒルズを建てるにあたり、森ビルは6,000億円の借入をしたという。当時の同社の年商はその1割の600億円である。大きなリスクをとるので、調達コストは徹底的に叩くわけだ。
 
 不動産王トランプ先生としては、自分のビジネス感覚でボーイングに相見積もりを求めたのだろうが、F/A-18(初飛行1978年)がF-35(初飛行2000年)と同程度の能力であるわけがない。いかに改装しようとも、F/A-18にステルス性など新世代に求められる性能を持たせるには限度がある。軍事専門家はこぞって「あり得ない話」とコメントしている。
 
 さらに北朝鮮との摩擦が大きくなると「非常に強力な艦隊を送った。空母より強力な潜水艦も持っている」と発言している。「強力」の定義をどう考えるかにもよるが、10万トン級の航空母艦(とその艦載機)と精々2万トンの潜水艦の戦闘力が比較できるとは思えない。これについては軍事専門家もコメントしていないようだ。アホらしすぎるのか、はたまた世間に知られていない新兵器の潜水艦でもいるのだろうか?
 
 この100年あまり、米国大統領は世界最強の戦力を指揮する司令官でもあった。こういう立場の人には適切な軍事知識を持ってほしいと切望します。
 
<初出:2017.5>