本書は2012年に「エコノミスト」の記者たちの共著により発表された、2050年の地球全体を予測したものである。もちろん前提はあって、(小惑星衝突のような)カタストロフィーはないとしている。それにしても、38年後の世界を予測するなど、雲をつかむような話である。
全20章、20テーマから成るのだが、いくつか参考になるものがあった。
(1) 民主主義の敵
決して良いものとは言えない民主主義、ただこれよりいいものも見いだせない。これには、大きな2つの敵があるという。ひとつは「金」、権力は必ず腐敗し民意によるものであっても常に「汚職・賄賂」の危険がある。
(2) 中国の経済
一人っ子政策等の影響で、急速に高齢化が進み「人口ボーナス」を失って減速する。安い労働力という優位性も消えてしまう。それが顕著になるのが2025年。なるほど、中国政府が「中國製造2025」という改革を掲げた背景はこれか、と思わせる。
(3) 縮小する世界の格差
先進国では格差が拡大するが、地球全体としては格差は縮小する。先進国の「中間層」は、発展途上国の同じ種類の労働者との競争で減収となり没落する。もはやどの国にいるから豊か/貧しいということはなく、その人物の教育・能力・人脈等アビリティで収入や生活が決まるとある。
(4) 高齢化による国家財政の悪化
先進国だけでなく、これから急激な人口増を迎える国も含めて寿命は延びていく。必然的に、年金・医療・介護等の社会的負担は増え、全てを民間に頼ることも他国から収奪することも難しく、国家財政の危機が訪れる。多くの国でポピュリズム政治家が支持を集めていて、(1)とも関係するが「民意」と「政治家の覚悟」が問われることになる。
このほか、Gゼロの世界が近づき地域紛争は激化するともる。限定核戦争もあり得るとのこと。僕の親父は、まあ元気で今月91歳になりました。2050年に僕も生きている可能性が、少しはあります。それまで、この本は持っていることにしましょう。
<初出:2018.9>