Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

32年はあっという間(過去編1)

 「朝まで生テレビ」でご存知、ジャーナリスト田原総一朗先生が32年前に発表したのが本書。18の省庁についてその当時の最先端の話題や行動様式を、多くの直接取材で積み重ねたネタで明らかにしている。先日「エコノミスト誌」が2050年(32年後)の未来を予測した本を取り上げたが、これはちょうどその分過去にさかのぼった話だ。

 

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 この時代僕は真面目なエンジニアで、政治の世界と絡んだのは設計していたコンピュータ機器がCOCOM規制に掛かるかどうか、当時の通産省に通った程度の事である。今はいくつかの省庁に出入りするようになって、官僚の皆さんのビヘイビアは多少分かってきた。32年間で変わったこともあれば、変わらないこともある。
 
建設省(現在は国土交通省
 田中角栄内閣以前は、首から下だけの「トンカチ官庁」と呼ばれていた。戦後道路も水道もボロボロの国土でやることは一杯あったから、政策を考えることは不要だったからだ。
 
 それがこの時期、政策官庁に変貌しようとしている。きっかけは「日本列島改造論」を実現するために大蔵省と渡り合って予算を獲ってくる田中派大臣たちだが、ある課長は「いずれ建設したインフラが寿命を迎え、建設省は修理省になる。その前にどのような政策を採るべきか、考える必要ができた」という。これは、現在の「インフラ長寿命化」議論に先だつ卓見だと思う。
 
運輸省(現在は国土交通省
 中曽根内閣の目玉のひとつが、国鉄民営化。累積債務22兆円を抱え、毎年2兆円づつ赤字を出す国鉄の始末は喫緊の課題だった。約39万人の従業員をほぼ半減する「分割民営化案」は、当然のように猛反対にさらされる。何故国鉄運輸省の意に逆らうのか、それは運輸省が戦後に出来た若い官庁で、戦前は「鉄道省」だったという国鉄の方が古参(官庁)だから。
 
 それが飛行機や高速バスの登場で、移動・輸送を鉄道だけに頼るわけではなくなった時代にどうするかという改革だったわけだ。今の旧運輸省は、複雑化した都会の交通や過疎化に悩む地方の輸送などデータを活用したインテリジェンス官庁に移行しようとしている。デジタル経済/特にIoT技術がこれを後押ししている。重要な地域の担い手だし、もう「若い官庁」などとはだれも言わないだろう。
 
<続く>