シンガポール地下鉄東西線の東端が、パシールリス駅。チャンギ空港への分岐駅であるタナメラから3駅の距離にある。一つ手前のタンピネス駅前の開発は進んでいて、東部の中心都市になりつつある。さまざまなショップはもちろん、日本企業のオフィスも中心部から移ってきている。もう1本、地下鉄ダウンタウン線の乗り入れも計画されているという。
タンピネスを出ると、列車の両側に原生林が現れる。そして多くのビルを建設中の開けたところに出るが、そこが終点パシールリス駅。駅前には巨大なバスターミナルがあって、高速バス含めて色とりどりのバスが行きかっている。
ここまで来た目的は、駅から200mくらい先にあるパシールリス公園の散策。ボタニックガーデンのような街中の公園と異なり、海岸が美しいと聞いてやってきた。
地下鉄(といってもこのあたりは高架上を走っている)の終端から少し先に行くと、うっそうとした原生林に入ってゆく。大きなカメラを重そうな三脚に据えた人たちがいる。口笛を吹いてあたりを見回しているところを見ると、野鳥を呼び寄せて写真を撮ろうとしているようだ。
海岸線に向かっていたのだが、湿地帯を巡る遊歩道があるというのでちょっと寄り道。木組みの遊歩道が整備されていて、マングローブやカニが手の届きそうなところで生きている。野鳥を観測するための展望台もあり、川に張り出したテラスもあって自然が満喫できる。
遊歩道を抜けると巨大な樹がまばらに生えている。多くの巨木にはヤドリギが付いているのだが、その大きさ・多さは半端ではない。さらに進むと海岸に出る。向かいに見えるのはウビン島。そこまではシンガポール領であり、その先はマレー半島であってマレーシア領になる。
ここはジョホール水道と呼ばれ、少し西にはセレター港がある。ここはイギリス海軍の極東最大の拠点だったところだ。マレー沖海戦で沈んだ巨艦「プリンスオブウェールズ」と「レパルス」も、この水道を通って出撃し帰らなかったのだろうと、戦争オタクの僕は思いをはせた。
今ではそんな血なまぐさい雰囲気はなく、海水浴場やキャンプ場が整備されていて市民や旅行者の憩いの場になっている。木陰が多いので、気温30度を超えていてもゆっくり散策できる。街中にあるボタニックガーデンよりも、海風もあって涼しいのがいい。魚釣り禁止と書いてあるのに竿を振っている家族連れや、自転車禁止の遊歩道に乗り入れてくる旅行者もいるが、まあのんびりできました。
<初出:2017.2>