Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ならなかった和解(後編)

 ローマ本国に攻め入ったハンニバル軍は連戦連勝、有名なカンナエの戦いでは決定的とも思える勝利をつかむ。

 
 重装歩兵32,000、軽装歩兵8,000、騎兵10,000、合計50,000 ⇒ 死傷5,700
◆ローマ軍
 重装歩兵55,000、軽装歩兵9,000、騎兵6,000、合計70,000 ⇒ 死傷60,000、捕虜10,000

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 ローマの正規軍は、ここに一旦全滅したのである。米国のゲームメーカーSPI社(アバロンヒルよりマニアックなメーカー)が、ポエニ戦争全てをシミュレートできるゲームを出していた。ある雑誌の付録についていたので、何度かやってみたことがある。ゲームデザイナーは、第一次ポエニ戦争ランドパワー(ローマ)とシーパワー(カルタゴ)の対決と捉えていて、最初はカルタゴ海軍に振り回されていたローマがいかに海軍を養うかをテーマにしていた。第二次ポエニ戦争では、ローマがどういう司令官を起用するかをテーマに据えていた。
 
 特に後者は非常にユニークな視点で、当時の共和制ローマは優秀な司令官を優先して選ぶことができないシステムだったということを主張している。年功序列か派閥の制約かは知らず、ローマ側プレーヤーは司令官をサイコロで選ぶことが規定されている。もちろん相手は「名将ハンニバル」最強の戦争指揮能力を持っている。
 
 結局勝敗の行方は、司令官選びのサイコロの目にかかっている。無能な司令官があたればカンナエのような大敗北になるし、スピキオのような司令官があたれば戦力や補給能力そのものはローマ軍優位なので勝利に近づける。史実としては、無能な司令官が除去されてしまったので選びなおされた次の司令官が優秀で、ローマは形勢を逆転させる。
 
 ハンニバルも敗れ、再び降伏したカルタゴだがワーカホリック市民はまたも復興を果たす。それをローマは恐怖の目で見ていた。結局「根絶やし」にしないといけないとの意識が強くなったローマは、第三次ポエニ戦争を仕掛けカルタゴという国を地上から消した。100年かけての戦争に勝利したわけだが、もしいずこかで和解の道を選んでいたらカルタゴの技術力などはローマにも恩恵をもたらしたのではなかろうか。
 
 そんな思いで、真珠湾での日米首脳の演説を聴いていた。
 
<初出:2016.12>