Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

50年間の君臨

 スティーブン・ハンターの描く「ボブ・ザ・ネイラー」ことボブ・リー・スワガー退役軍曹は最強の狙撃手だろう。60歳を過ぎても、なかなか引退させてもらえない。しかしアニメの世界では、彼を凌駕して50年間最強の狙撃手を続けている人物がいる。
 

        f:id:nicky-akira:20190413160453p:plain

 
 ご存じゴルゴ13こと、デューク東郷である。デビューは1968年の「ビッグ・セイフ作戦」というから、あと2年で50周年になる。このシーンはジャングルの中を走り抜けながら、右手のコンバットナイフで敵の歩兵を一人づつ倒していくところを描いている。
 
 相手となった米軍の司令官は、ゴルゴ13に銃を奪われるのを恐れて、1発づつしか自軍の兵士に実弾を持たせなかった。なにしろ銃を奪われても銃弾だけあれば、万力に銃弾を据えて雷管をハンマーで叩くことで相手を殺せる「狙撃者」である。十分すぎる用心も必要ではあろう。足掛け50年間、国際政治の裏舞台で「銃弾1発で世界を変える男」として君臨し続けている。最新の「サイバー歩兵」にすら勝利したらしい。
 
 麻生副総理が好むキャラだと言われていて、この種類のアニメとしては異例の長寿シリーズだろう。それまでの「マンガ家」は自分でストーリーを考え自分で作画もしていた。それでは、多作になるのは難しい。
 
 作者さいとう・たかをに先見の明があったのは、マンガという作品をチームの力で継続的に作るという考え方になったことだろう。さいとうプロと名乗り、銃器に詳しい人・ストーリーに巧みな人・世情に詳しい人などを集めたらしい。後には、シナリオを公募することも始めている。
 
 さすがに最近は「不可能狙撃」も、新しくかつ現実的なアイデアは少なくなり、経済・国際・政治事情などを背景にしたシナリオが増えているらしい。すでに200冊に近い単行本を出しているシリーズとしてはいたしかたないことだろう。それでも初期のころ、ゴルゴ13は面白く読んだ。多くの人に世界事情などを伝えるいいメディアであり続けてくれれば、と思う。
 
<初出:2016.8>