Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ネットビジネス対プーチン

 「インターネットは世界でひとつ、国境を渡るデータの自由を確保しよう」というのは、僕たちがずっと主張しつづけてきたこと。G7やG20、TPP交渉やRCEP交渉で日本の産業界は言い続けているのだが、容易に首をタテに振らない大国が2つ。目立つのは「サイバーセキュリティ法」を施行して、実名でなくてはインターネットを使わせないし、政府は内容をチェックできるとした中国だが、もうひとつの国ロシアについての情報はあまりなかった。

 

 
 この記事にあるように、プログラミングコンテストで1位2位をロシアの大学が占めるように、ロシアの「サイバー能力」はあなどれないものがある。ただインターネットサービスを始めとするIT関連技術者集団が必ずしも政府の言いなりになっていないことを、この記事は中盤以降で取り上げている。争点になっているのはセキュリティ性の高いメッセンジャーサービスの「テレグラム」。並みの手段では政府当局に傍受/盗聴されてしまう危険のある人たちが使っているのだろう、政府はなんとかこれをこじあけようとしている。
 
 すでにロシア政府はLINEを使用禁止にしているが、テレグラムに対しても禁止命令を出した。しかしプロバイダを片端からテレグラムのIPアドレスを遮断するようにしていてさえも、実質的な遮断には失敗しているらしい。ロシア中の高度なプログラマーは、全てテレグラムの味方だからという。

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 記事はテレグラム側の徹底抗戦や、政府側の執拗な攻勢は「仮想通貨」をめぐる争いが背景にあると言っているが、決して経済的な意味だけではない対立がそこにあると思う。プーチン大統領の支持率は高いが、若年層に限ればさほど高くない。この世代がデジタルネットワークで結束したら、政変が起きる可能性があるのだ。だからこその政府側の強硬姿勢なのだろうが、インターネットの世界で無理な弾圧をすると、かえって窮地に追い込まれるかもしれないと知るべきだろう。
 
 バルト海から黒海にかけて、あるいは極東でも存在感や脅威を示す国ロシアだが、内政は問題だらけ。そこにこんな火種が加われば・・・具体的なロシア危機さえ可能性が出てくる。もしこの国がかつてのように液状化すれば、北朝鮮の比ではないリスクを世界が背負い込むことになります。
 
<初出:2018.5>