もうウナギの稚魚が採れないからアナゴでもいいじゃないか、と前回書いた。それは本音だったのだが、本物のウナギが食べられるならそれはもちろん嬉しい。ある意味ソウルフードなのだし、決してマズいとは思っていない。問題は、価格の高騰だけだ。
この日ある業界を束ねる機関で、業界各社を集めた勉強会があった。フォーラム形式で毎年テーマを決め、40社あまりのテーマに関心のある会員企業が集まるのだという。今年はICT系のテーマが設定されていて、何人かのパネラーが業界内外から登壇するのの端っこに加わることになった。
有識者の講演、業界団体の調査発表などに続いて、短いプレゼンを含めたパネルディスカッションを１時間あまりやった。なかなかに硬い雰囲気で、質問もほとんど出ない。陽気そうなモデレータが、やや軽めの質問を投げてきてそれには重めに応えた。
フォーラムが終わって帰ろうとすると、懇親会もあるから顔を出してくれとのこと。少し出ていくかと会場に向かうと、なかなか立派な料理が並んでいる。どうせカワキモノとサンドイッチくらいだろうと思っていたのだが、いい意味で裏切られた。
寿司桶が人数のわりに多いので、あとでゆっくり取りにいけばいいなとまずはビールをなめていた。卓上に置いてあった海老の唐揚げをつまみながら、やってくる質問者の対応をしているとこのフォーラムの意味が分かったような気がした。
本番はこの懇親会なのではないか、時の話題（会社に言い訳ができる程度のテーマ）で集客をして、昼間は硬い雰囲気でもいいから懇親会に誘導する。そこでのコミュニケーションが重要というわけ。まあ「客寄せパンダ」でもお役に立てればいいかなと思っていると、お酒や食べ物を持ったウェイターが次々に回ってくる。海老天そばをもらって手も付けられないうちに、何かいい香りのものがやってきた。
ウ、ウナギではないか。情けないとおもいつつも、何年ぶりだろうと感慨に浸ってしまった。もちろん一口どんぶりですが、しっかりしたのが２切れ乗っかっています。業界懇親会もいいものですね。
＜初出：2018.2＞
