Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

外食チェーン、値上げの怖さ

 日銀のデフレ脱却政策が利いたからとは思わないが、じわり値上げの雰囲気が出てきている。デフレの象徴牛丼も、「吉野家」はじめ原材料と人権費高騰でピンチに立っている。先日は、居酒屋チェーン「鳥貴族」の値上げが話題になった。企業にとって値上げをお客様に言い出すのは、よほど条件が整わない限り難しい。逆に値下げについて常にバイアスが掛かっていたのが、僕が暮らしているICT関連事業の宿命。


 何社かで価格競争をしていて、苦しくなった1社が無謀な値下げに踏み切ると他社もなんらかの追随を余儀なくされる。また同じ価格帯での競争になり・・・の繰り返しである。値下げを可能としてきた技術革新も及ばないくらい下がってしまうと、今度は倒産するところが出てくる。無理な価格設定をして潰れてくれたら、市場値がもどるかというとそんなことはない。「虎は死して皮を残し、企業は死して値段を残す」のである。

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 閑話休題外食チェーンの苦境だが、あの成長企業にも暗雲となって覆いかぶさってきたというのがこの記事。

https://biz-journal.jp/2018/10/post_25061.html 

 「いきなりステーキ」といえば行列のできる店として有名で、先ごろ「幸楽園」の店舗を吸収するなど拡大路線の真っ只中だったはずだ。しかしこの記事によると、肉単価の値上げをしたのがたたって客数の頭打ち、客単価も(値上げにもかかわらず)下がってしまったという。それでも拡大路線は維持して、地方都市へと展開していくらしい。

 ステーキの立ち食いという斬新な手法は、純粋に「肉食いたい」というニーズを捉えたものだったことに間違いは無い。しかし当初は斬新だったものも、そのうちに慣れになってくる。この食べ方、単価が当たり前になってきたところで、そのエリアでの成長は止まったのかもしれない。斬新さを感じてもらえる地方都市への展開というのは、ある意味当然なのだろう。

 「いきなりステーキ」も、消費者の心に値段を残してしまったのだと思う。「吉野家」が、「早い、安い、旨い」からヘルシー志向に変わっていくように、早くもチェンジの時期を迎えているのかもしれません。
 
<初出:2017.11>