Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ハリケーンとの闘い

 アメリカ中西部で脅威となる自然災害といえば、地震ではなくハリケーンである。今年もデカいのがやってきた。ハリケーン「ハービー」といい、規模としては2005年に2,000人近い犠牲者を出した「カトリーナ」よりも大きい。年々、脅威が増しているとする気象関係者も多い。

 
 
 カトリーナは、ジャズで有名なニューオリンズ(新しいオルレアンの意味)のかなりの部分を水没させ、比較的低所得の人たちを中心に多くの犠牲者を出した。今でも放棄されたままの土地もあると聞いたことがある。
 
 自然災害を受けても事業を(必要最小限でも)続ける、というのが事業継続(Business Continuity Management)という概念。当時これを研究していて、カトリーナでどのような事業継続事例があったか調べたことがある。事業継続というのは、9・11のおりワールドトレードセンターに事業所がある金融会社が、事件の直後に別に用意されていたバックアップオフィスで事業を再開したというので有名になった。

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 それから4年、いろいろな業界で事業継続計画が整備されていたが、カトリーナでどのような事業継続が成されたか興味があった。一番興味を惹いたのは、日本の全農の関連会社の例。ミシシッピ川流域の穀倉地帯から家畜の飼料となる穀物を集め、河口近くのサイロに集積、船積みして日本に送る業務をしていた。
 
 地震と違い、ハリケーンはかなり以前から来襲が予測できる。経営者は来襲数日前から事業継続計画を発動、数百キロ離れた場所にバックアップオフィスを設置、サイロや運送船に指示を出すオペレーターを家族ともども避難させた。サイロそのものは移動させられないが、強固に作ってあるので簡単には壊れない。ハリケーンによってオペレーターが出社できなかったり、ケガをするなどのリスクを回避するのが最善との判断である。
 
 ハリケーンが去って半月、この会社の機能は生き残った。川の水運が50%程度に縮小していたものの、穀物の集積から日本への船積みは50%以上の能力を維持していた。自然災害は無いに越したことはない。ただ来てしまったら打つ手がありません、というのでは経営(国の経営もだが)とは言えない。今回のハービーの来襲も不幸なことだが、それがどのような知恵を生んだのか、興味を持って続報を待っています。
 
<初出:2017.9>