Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

バルト海の緊張(3/終)

 そのスウェーデン軍だが、なかなか面白い特徴を持った軍隊である。地理的に湿地帯が多く島嶼も多いことから、大規模な陸上戦力が移動することは難しい。極地に近いこともあって夏季以外には歩兵の徒歩の行軍も容易ではない。隣国ノルウェーの戦闘食(いわゆるミリメシ)などは、常人の1日分のカロリーをまかなうほどのカロリーが1食で供与される。

 
 小規模な戦力が前提であるし、歩兵の能力も温帯ほどは発揮できないことから、機械化戦力が大きな意味を持つ。例えばアーチャー型自走砲は、発射位置についてすぐに斉射を可能とするだけでなく、全自動での連射が可能である。ただし、6発の連射が終わると基地に戻らないと再装填できないらしい。それでも位置について迅速に砲撃することを優先した戦術思想である。
 
 また主力戦車はというと、Strv.103という国産戦車が有名である。車高は極めて低く(2.14m)、50km/hの移動が可能で水上も航行可能だ。代償として、砲塔を装備できず主砲(105mm)は車体に埋め込まれている。いわゆる対戦車自走砲形式なのだが、これには、長短がある。簡単に言うと複雑な地形で待ち伏せ攻撃をかけるには適切な戦車である。

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 最後に潜水艦。狭いバルト海を渡ってくる敵艦隊/輸送船団を阻止するには、原子力潜水艦など必要ない。静粛性に優れた小型のディーゼル艦が複数あって、敵の補給線を脅かせればいい。小型で、静粛で小回りの利くゴットランド型は、専守防衛の思想を具現化した設計思想である。
 
 同じ思想であるはずの日本、クリミアを無法に獲得しバルト海にも触手を伸ばすかもしれないロシアを前に、「北方領土返せ」だけの宥和政策だけでいいのだろう?北朝鮮のミサイルや、尖閣諸島を狙う中国に気を取られて、ロシアに利尻島礼文島を盗られちゃったなんてことのないようにお願いしたいです。
 
<初出:2018.1>