Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

右肩上がり経済の残滓

 日本郵政野村不動産の買収を企画しているらしい。旧郵政省は駅前の一等地に多くの拠点を持っている。東京駅丸の内南口前の郵便局は、外観を残しながら、高層ビルKITTEになった。この不動産資産規模は計り知れない。元国営事業が民営化される時には、(ボーナスとして?)不動産がくっついてくることは普通にある。

 
 昔日本たばこ殿に文書電子化ソリューションを提案に行き「文書倉庫が必要なくなります」と言ったところ、「倉庫は民営化の時に一杯貰っているから、間に合っている」との答えだった。この意識こそ、民営化すべきであろう。時代こそ違え、それに比べればJR東日本品川新駅開業で不動産ビジネスを拡大しようとしているのは興味深い。
 
 日本郵政も、電子メールの普及で先細りは間違いない郵便事業、民間金融機関との激烈な競争が待っている保険・貯金事業をかんがえれば、業容拡大で不動産というのも理解できないわけではない。しかしちょっと待っていただきたいのは、2015年に買ったオーストラリアの物流会社「トール」の巨額損失をだしたばかり。
 
 

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 聞くと、企業価値を大きく上回る買収額だったらしい。要するに「高値つかみ」というやつ。元東芝の西室前社長の主導で行われた買収劇だったとある。その東芝ウェスチングハウス買収の始末で苦しんでいるのは、周知の通りである。これにも西室氏がかんでいることは間違いないだろう。いずれも十分な戦略や調査もなく、将来に向けた投資という名目で行われた無謀な拡大策ではなかっただろうか。
 
 作家の堺屋太一は、「うつむき加減の時代」という言葉を広めた。高度成長期「右肩上がり」の時代には、無理のある先行投資もいつかは報われる。過剰投資も需要増によって賄えるようになるし、インフレなので後に買収するより安いからだ。バブルがはじけて20余年、いまだにこの時代の残滓を引きずっている経営者が(生き延びて)いるとは驚きである。
 
<初出:2017.6>