Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ゆうちょ銀行の預金限度額

 時の人である野田総務大臣、新任早々メディアに引っ張りだこにされている。総務省の一部が旧郵政省で、彼女の最初の閣僚職が郵政大臣だったことは一昨日述べた。小泉改革の象徴だった「郵政民営化」は、僕らから見ると当然のことだった。2000年当時、日本中のATM(現金自動預け払い機)は約15万台あったが、郵便局設置のものが2万台以上あってシェア1位。都銀が3つ合併したメガバンクですら足元にも及ばない数である。
 
 それが郵便局のATMだけは、使用手数料が無料である。それだけでも、民業圧迫と言えるだろう。世襲の公務員と言われた「郵便局長」ポストも、改革の結果民営化され株式会社組織の一部になった。ただ、相変わらず民間金融機関との違いは存在する。顕著なのが、ゆうちょ銀行の預金預入額の上限。
 
 一般の銀行には預け入れ限度額はないが、ゆうちょ銀行にはある。かつては1,000万円、昨年引き上げられて1,300万円になった。2,000万円という話もあったのだが、揺り戻しがあって半端な数字に落ち着いている。僕はある国際会議で、西室社長(当時)が「ゆうちょ銀行こそ、日本を代表する地域に根差した金融機関である」と米国金融界に言い、同席していたメガバンクの幹部が気色ばんだのを覚えている。西室氏はその会議に「東芝顧問」の肩書で来ていたのに、またゆうちょ限度額引き上げ議論の最中だったのに、である。

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 株式会社とはいえ多数の株式を政府が持つゆうちょ銀行には、暗黙の政府保証があると見られている。銀行が倒産した時は、ペイオフという制度があって預金のうち1,000万円までが保証される。明示はないが、これが民間銀行の預金限度額ととらえている利用者は多い。
 
 ゆうちょ銀行の預金限度額と、ペイオフ額に法的な相互性はないが、利用者からは「安全な限度額」という意味で一緒に考えることもできよう。メディアも興味を持つこのテーマ、早速新大臣に質問した記者がいるようだ。
 
 
 野田大臣の「民営化したのだから平等な立場で、限度額撤廃というのも考えられる」というのは、ひとつの考え方だ。ただ、それならば、ゆうちょ銀行にもペイオフ限度1,000万円にシーリングを設けるべきだ。そして、一般銀行と同じように、倒産の定義をはっきりさせ政府(税金)からの無限補填はしないと明示する必要がある。
 
 大臣が言ったことの一部を切り出すのがメディアの常、この発言のウラに僕の言うような意識があって欲しいものだと思います。
 
<初出:2017.8>