Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

オープン戦略・クローズド戦略(6/終)

 ICT産業では、オープン戦略を中心にした企業が生き残ってきたという話をこれまでした。ただ本当に全部オープンというのはなかなか難しい。実質的には、オープン戦略とクローズド戦略のハイブリッド型になるはずだ。これは他の産業でも同じだろう。

 例えばLEDで有名な日亜化学工業の場合、それまで難しいとされた青色LEDを開発さらに白色LEDへと進化させたが、当初は完全にクローズド戦略だった。某ノーベル賞受賞者との特許係争もあったが、知的財産の保護には全力を尽くしていた。それが白色LED開発から6年経って、クロスライセンス含めて徐々にオープン化の道をとるようになる。

 戦略転換には、いつ・誰から・どうやってなどの詳細条件の詰めが必要である。日亜化学工業の場合は技術が確立し歩留まりが安定するころがタイミングだったのだろう、相手は大手を避け中堅どころを選んだ。大手と組めば一気に販路は広がるが、まるごと呑み込まれてしまうリスクがある。そこで着実に増やしていく道を選んだということ。それも全部オープンではなく、特許使用は認めても製法のコアノウハウは秘匿しているらしい。

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 ハイブリッド戦略という意味では、各社以下のように区分している。

◆アップル
 スマホ等端末の製造工程は委託企業に開示するが、デザインやタッチパネルの技術はクローズド領域に置く。

インテル
 マザーボードなどの製造図面や技術は開示するが、プロセッサの中身はブラックボックス

ボッシュ
 自動車用の基本ソフトウェア"Autosar" をデジュールスタンダードにする動きだが、制御パラメータは秘匿。

 簡単に言うと、全部自前でやらないということは垂直統合でなく水平分業の態勢をとることになるが、その中で自社の立ち位置をどう決めるかが経営の役割である。自社の立ち位置、つまりコアコンピタンスをどこに求め、維持し発展させるか、これこそ21世紀の経営ゲームの焦点である。
 
<初出:2017.2>