Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

オープン戦略・クローズド戦略(4)

 量のIBM対質のアップルという戦いは、前者にやや有利に見えた。新興企業であるアップルにはいろいろな落とし穴もあったし、全米にまたがる販路の確保は容易ではなかったろう。しかしIBM側にも問題が出てきた。前回業界の順位を、首位IBM、2位DECと書いたが、IBM/ESDが急激に伸びたことで、ESDがDECの業績を抜いてしまったのだ。首位IBM、2位IBM/ESD、3位DECとなり、IBMが自らに追い上げられるという椿事が起きた。

 
 IBMはここで、僕から見れば最悪の、彼らから見れば当然の手段をとった。ESDのあり方を見直し、本体へ戻し入れることにしたのだ。ESDの上昇エンジンだったオープン戦略も、ここに終焉を迎えることになる。ちょうどESDのあり方見直しの最中に、ESDのトップであるイーストリッジ氏が飛行機事故で死亡したこともあって、IBMに戻ったESDにかつての輝きはなくなったようだ。これを嫌気したESDのキーマンがIBMを退社、コンパックやデルという新興企業に移ってパーソナルコンピュータ(PC)事業を続けてゆく。

 PCより少し性能が上のクラスに、エンジニアリングワークステーション(EWS)という分野があり、アポロやヒューレットパッカード(HP)といった企業が製品を供給していた。高性能のグラフィックや3次元図形処理能力が高く、CAD(Computer Aided Design)などに使われていたが、これらのオペレーティングシステムは"UNIX" が中心だった。その市場も基本的にクローズド戦略だったが、最初に紹介した"LINUX" の登場によってオープン戦略が導入され始める。
 

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 それではDECなどのミニコンはどうなったのかというと、そのようなものはなくなりつつあった。一部は上記EWSのエンジンになり、一部は小規模なサーバーとしてネットワークの中心に座るようになっていた。これらも"UNIX" が主流になってきたのでEWSと同じようにオープン戦略に組み込まれていった。

 こうして生まれたのが、PCをクライアントにして不足する計算能力やストレージ能力をネットワーク上のサーバーが補うCSS(Client Server System)である。PCもサーバーもオープン戦略の事業形態で成り立っているので、必然的にこのシステム全体もオープンシステムになっていった。

<続く>