Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

オバマケアをめぐる攻防(前編)

 3日に米国議会がスタートして、大統領交代に先駆けて政治的争点が具体的に動き始めた。どうも1丁目1番地は「オバマケア(正式には"Patient Protection & Affordable Care Act" という)の撤廃」らしい。直訳すると「患者保護と医療費負担適正化法」であるが、この成立までには悲惨な歴史と長い戦いがあったものだ。

 
 日本の国民皆保険制度(これだっていつまで持つかはわからないが)に慣れている我々に実感が湧かないのが、米国の医療保険制度。海外旅行中に下手に病院に行くと、請求金額にわが目を疑う。金額は$じゃなくて¥かと思った人もいるやに聞く。そう、2ケタ高いこともあるようだ。例えば、以下のような具合。
 
 ・骨折で手術し1日入院  ⇒ $15,000
 ・自然気胸の治療(手術ナシ)で6日入院  ⇒ $80,000
 
 歯医者でアゴのレントゲン写真を撮っただけで$5,000というウワサも聞いた。
 
 いわば米国は医療保険階層社会であり、加入している保険によって治療を受けられる病院が異なる。当然、高額な保険ならば良い病院・医師に頼ることができるわけ。保険料も半端ではないので、無保険の人も多い。オバマケア導入までは加入率は8割くらいだったという。これは20世紀米国の政治課題であり続けた。
 

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 古くはセオドア・ルーズベルト大統領も改革をめざし、近年ではビル・クリントン夫妻も取組んで挫折した、特に民主党にとっての大テーマだった。21世紀になり類まれなリーダシップを持つオバマ大統領の8年間で、その大テーマをクリアしたのが「オバマケア」である。
 
 内容としては、これまで保険購入をためらったり既往症などで購入できなかった人が保険を購入できるように、公的補助や規制改革をしたというもの。したがってこれまで保険購入が出来ていた人たちにとってはメリットはなく、保険料が上がるならばむしろデメリットである。
 
 米国在住の政治学者によれば「保険に入れなかった層(下流?)の人たちを救ったものの、その上の層の反発を招いた」とのこと。副大統領に就任するペンス氏が言う「オバマケアが失敗したから、国民は新しい大統領を選んだ」というのは言いすぎだとしても、かの層の多くが民主党ヒラリー候補に投票しなかっただろうと推測は出来る。
 
<続く>