Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

議員立法という手法

 先週の日曜討論で、カジノ(IR)法案について各党が意見を述べていた。地域活性化につながるとする自民党・維新の会他、依存症をもたらし社会不安となるという、社民党自由党、犯罪だときめつける共産党、何か微妙な民進党公明党。なかなか面白い「論戦」だった。

 
 そのうち何度も出てくる言葉「議員立法だから」。審議時間が5時間あまりは短いというのも、議員立法の法案審議は通常長くないと西村議員(自民党)が答え、依存症対策等が十分でないというのも、議員立法で大きな方向性を出すもので詳細は次の法整備に委ねるとの回答だった。
 
 この法案、かなり長い間「たなざらし」にされてきたように思う。超党派(当然民進党議員も入っている)の議員連盟で、地域活性化のために提案しているものだ。現に米国ネバダ州はギャンブル合法の州、あまり産業がない州として選んだ活性化の手段である。まあ反対する議員・政党の気持ちも分からなくはないが、競輪・競馬・競艇・宝くじ等が合法になっている上、世界のカジノ市場なみのパチンコ市場を抱えている日本で、ギャンブルを犯罪よばわりされても困る。

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 さて議員立法がなぜ、大きな方向性を出すだけで詳細は今後の法整備としているかというと、実施にあたってはこれまでの膨大な法律との整合性をとるような作業は、議員ではできないからである。政治は大きな方向性を示し執行は官僚に任せるのが普通で、まず方向性だから骨子だけの基本法になり、いついつまでに実施できるような法整備をせよと書き込むわけ。
 
 一般に骨子だけだから細かなところはなく、従って審議時間も短くて十分であろう。かつての海洋基本法宇宙基本法超党派議員連盟が生み出したものだが、やはりおおきな方向性だけ出している。最近のものではサイバーセキュリティ基本法議員立法だった。僕が注目しているのは、やはり今国会にかかっている「官民データ活用推進基本法」。これも議員立法で、審議入りした日に委員会採決、衆議院通過の見通しだ。
 
 法律の細部を詰めるというのは実に骨の折れる作業で、専門家たる霞ヶ関官僚でなくては不可能に近い。だから議員が方向性を示すという基本法議員立法が増えてきたのはある意味望ましい。本来、国会=議員は立法府。法律を作るのが商売なのだから。
 
<初出:2016.12>