Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の港湾(3)

 2回にわたって港湾行政の全体像を見てきたが、ここからは個別港湾の生き残り戦略を考えてみよう。港湾の価値は、何を積み込み何を降ろすかで決まる。輸入品であれば消費地ないし加工地に近いか、輸出品であれば生産地に近いかが優位性になる。

 すでに日立港・ひたち那珂港・大洗港の一体運用を始めているこの3港では、建設機械の工場(コマツ日立建機)を港に直結したところに誘致し、生産即船積みの体制を整えている。普段仲がいいとは思えない両社が、仲良く港を利用しているかと思うと興味深い。また欧州からの輸入車を扱っており、広いヤードを設けて常磐道直結で首都圏(大消費地)に移送できるインフラを持っていた。建設機械も自動車も、コンテナ扱い品でないのは特徴的だ。

 横浜港の最大の輸出品は完成車である。横浜という町が、周辺含めて日産自動車に拠るところが大きいことを示している。最大の輸入品はLNGガス。ガスの備蓄基地や精製工場が付近に多い。加えて、18mの水深を持つ埠頭は日本中でここしかない。大型化するクルーズ船も楽々接岸可能だ。加えて先ごろ開通した圏央道により、港湾からの物流は改善された。

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 鹿島港は、カナダやアメリカからの木材輸入が多いという。値段の割りにかさばる木材は、より輸送コストに厳しい商品である。なぜ鹿島にというと、湾口が狭くて混雑する東京湾に入る2~3日のオーバーヘッドが惜しいからとの答え。もちろん、広いヤードが取れるのも魅力だろうが、北太平洋の大圏航路をまっすぐ来てとっかかりにある鹿島港に降ろせれば、日数は稼げるだろう。
 
 新しい航路が開発されるとすると、それに適合した港湾にスポット・ライトがあたる可能性もある。一番注目されているのは、北極海航路地球温暖化のおかげ(?)で、ベーリング海峡からシベリア北岸、白海、北海経由で欧州へ向かう航路が現実味を帯びてきた。
 
 東京からロッテルダムへ、今は南シナ海(結構きな臭い)・マラッカ海峡(海賊が出るらしい)・ソマリア沖(海賊のメッカ)・スエズ運河(エジプトも政情不安)・ジブラルタルイギリス海峡を抜けてゆく。それよりは、30%以上距離が縮まるらしい。北極海航路が開かれれば、わずかの差かもしれないが、日本海側の港に有利なように思う。

<続く>