シンガポールが海運の要衝であることは、昔から変わっていない。東西交易路として、8~9世紀ころ「海のシルクロード」が開かれている。もちろん、シンガポールはその中継点のひとつだ。セントーサ島にある"Maritime Experiential Museum" には海のシルクロードに関する重厚な展示がある。
これらの地の特産品や風俗が個々にコーナーを設けて展示されている。米などの穀類、バティックなどの織物、さまざまな工芸品があるし、いつごろどういう民族・王朝が開いたかなど港の歴史が詳しく書いてある。
目立つのは「海賊」の表記。今でもマラッカ海峡はソマリア沖と並んで海賊のメッカだが、かなり伝統のある職業だったようだ。陸のシルクロードは広い砂漠や高い山、そこに出る山賊などが障害であるが、似たような障害は海のそれにもある。両者の比較表もあって、距離的には大きな差がないことがわかる。海のメリットは、一度に大量の物資を運べることだが、その分何かがあった場合の損失も大きい。
ルートを詳細にみると、マラッカからセイロンへ至るところが危険なように思う。アンダマン海を直線的に横断しているので、沿岸から大きく離れるからだ。後年イギリスの東インド会社がここにルートを開拓した時は、セイロンからヤンゴン、ペナンと経由してマラッカに至っている。これなら距離は長くなるが、沿岸を航行できて安全性は増す。
<初出:2016.11>