今度は、テキサス州ダラスで銃撃事件があった。ケネディ大統領が暗殺された町だが、今回狙われたのは警官だというから驚く。しかも死亡者５名。使用された銃器についての情報はないが、殺傷力の高いライフルだと思われる。犯人はアフガニスタンでの従軍経験があるともいう。
フロリダの事件は50名もの犠牲者を出したが、性的マイノリティの集まるところだったせいもあって世間の目は冷ややかな面もあった。今回は公僕であり治安の責任者たる警官を10名余死傷させたというので、本来なら社会への挑戦と受け取られる犯行のはずだった。ところが、その前に２件の人種差別的な警察の行為があって、警察が本当に正義かという疑念がアメリカ社会にあったことから、複雑な状況になってしまった。
２人がかりで組み伏せ、ほぼ抵抗できなくなった黒人容疑者に、警官が５発撃ちこんだ（当然死にます）事件があった。交通取り締まりに対し免許証を取り出そうとして警官に撃たれた黒人ドライバー、という事件もあった。こういう事件は潜在的にいっぱいあるのかもしれないが、助手席にいた女性が瀕死のさまをインターネットに流したことで、世界が知ってしまった。
その報復として白人警官を狙撃した、というのが今回の「怨嗟の銃弾」だと思われる。南北戦争以前からある黒人差別問題が再び噴出してきたアメリカ。ある意味「イスラム国」よりも根深い問題に、両大統領候補はどうこたえるのだろうか？
＜初出：2016.7＞
