Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ICカード開発史(3)

 誰もが持っているカードにしようということでということで、いろいろな模索が始まる。だが、国民ひとりに1枚、と期待された住民基本台帳カードは全く普及せず。それから15年経って「マイナンバーカード」で再挑戦中だが、必ずしも明るい見通しではない。その他の行政発行カードはというと、大口である運転免許証のIC化は2009年までかかった。
 
 テレホンカードは1980年代からかなり使われるようになっていたが、度数の高い高価なカードの偽造が1990年代に増えて来た。その対策としてIC化が検討され、1999年に採用された。しかし、使える電話機が限定されていた上、有効期限があり使い勝手が悪かった。結局急速に普及してきた「携帯電話」に押されて、短命に終わった。

 しかしここにヒントがあった。金券でもあるテレホンカードは、偽造防止のためにIC化を図ったのである。前回書いたように、磁気ストライプ等インテリジェンスのないカードでは、偽造防止に限界があったのだ。

 最初のブレイクは、クレジットカードだった。ブランドと呼ばれる運用会社(例:VISA、Master等)は世界規模に展開しており、加盟商店等を束ねるアクアイアラーと加入個人法人を束ねるイシュアーで成り立っているのが、この業界。複雑な手数料システムを構築していて、ある程度のカード偽造等の犯罪にも対応できるようになっている。

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 しかし1990年代、こちらも偽造被害が増え始めた。これまでのシステムで対応しきれないと考えたクレジット業界は、ICカード化を進めることにした。クレジットカードは、最初は磁気ストライプですらなく「エンボス」だった。カード番号や使用者名などを浮き彫りにしたものを、写し取って証跡にする方法。数年前、ニューヨークにタクシーでカードを出したらエンボス処理をしたのでびっくりしたことがある。その処理が面倒で(恐らく偽造もあって)磁気ストライプにしたのだろうが、1990年代にIC化が始まった。

 そうすると次に何をIC化できるか、金融業界に注目が集まってきた。偽造防止といえば彼らのニーズが一番高いのだから。

<続く>