Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ソフトパワーによる犯罪抑止(前編)

 横浜の病院で、点滴に消毒薬を入れたと思われる連続殺人事件が起きた。ミステリー小説ではありそうな話だし、TVドラマ・映画でもそんなシーンはあったと思うが、実際に起きてみると空恐ろしいものがある。先だっては障害者施設に刃物数本を持って侵入し、20名ちかい人を殺すと言う陰惨な事件もあった。かなり昔だが、小学校に乱入したヤツもいる。

 無抵抗・無防備な人たちを狙う卑劣な犯罪だが、単にその時の被害・犠牲に留まらない影響を社会に与えるので、より罪深い。小学校にしても、障害者施設にしても、地域の住民と積極的に交わることは、初等教育の中で人とのふれあいを得たり、障害者の自立や障害者への偏見の除去につながるはずだ。

 それがこのような事件を受けると「再発防止」として、施設を物理的に守ることになりがちだ。開かれた施設ではなくなり、地域の人にとっても、施設運営者にとっても、施設の中の人にとっても重要な「交わり」が失われる。施設に肉親を預けている人たちとしては、物理的な壁を高くして安心したいのかもしれないが、その結果肉親を幽閉してしまうわけだ。

 

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 今回の病院の事件まだわからないことだらけではあるが、点滴に消毒薬を注射針などで注入した犯罪だと思う。点滴溶液も消毒薬もカギのかかるところに保管されていたわけではない。理屈の上では、誰にでも機会はあったことになる。そこで再発防止策を気の利かない人に考えさせると、これらの薬をカギのかかるところに入れて残量の管理をすると言い出すだろう。確かにモルヒネ等の特定の薬は、そういう管理が必要だ。

 しかし通常の点滴溶液や消毒薬までそのような管理をするようになっては、病院の管理工数が増大し患者のケアが犠牲になるかコストが上昇して(国民の)負担が増えることになろう。さらに人を殺そうと思ったら武器にならないものはなく、犯人側から見れば別の手口を考えればいいだけのことである。壁を高くするハードパワーでは、十分な抑止力にならないのだ。

<続く>