Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

度重なる黒人射殺

 9/20、ノースカロライナ州シャーロットで障害のある黒人男性(43歳)が、警官に射殺された。シャーロット警察による民間人殺害は、今年6人目だという。これまでにも何度か同じような事件があり、現場がインターネットに流されたりもした。結果として、抗議デモが起きたりそれが暴動にエスカレートしたりした。
 
 これはエド・マクベイン「87分署シリーズ」中期の作品であるが、ここでも黒人街での事件をキャレラ刑事やホース刑事が追う姿が描かれている。1975年の発表であるが、架空の大都会アイソラの貧しい地区の描写はリアルだ。黒人のかなりの人たちが定職につけず、子供のころから犯罪に手を染め、麻薬におぼれていく。
 
 87分署はこういう危険なところが管轄で、別の分署から移ってきたばかりのホース刑事は、不用意な行動をしてキャレラ刑事を危険にさらしたこともある。87分署シリーズの警官は、今にして言うとダイバーシティがあって、イタリア系・ユダヤ系・プエルトリコ系に黒人(ブラウン刑事)もいる。それでも多くは白人だ。

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 エド・マクベインは作中で「キャレラ刑事の知っている警官の多くは差別主義者ではない」が、「白人の警官は黒人やプエルトリコ人を見分けるのが難しい」と書いている。警官の多くが白人であるのも、事実だ。1975年のアイソラで描かれていた状況が、アメリカの地方都市(特に南部)では変わっていないようだ。公務員のダイバーシティは進んでいて、ほとんどが白人だというのは警官だけだ。どうしても、警官対黒人をはじめとするマイノリティという構図に見えてしまう。
 
 僕らの知っているアメリカは、西海岸と東海岸の一部だけ。マーロウのロスアンゼルスも、スペンサーのボストンもその「特殊地域」に含まれる。ワシントンDCなど歩いていると、1975年のアイソラのように危険な所は多くないと感じる。テロ対策だけでなく、地方都市の治安改善も大きな課題なのだろう。
 
<初出:2016.9>