Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

データセンターの環境指標

データセンターに欠かせないものが2つある。1つが通信機能、もう1つが電力供給だ。東日本大震災のような大災害でも、データセンターが止まったという話は聞かない。計画停電の対象地域になっていたとしても、停電の間はバックアップ電源を使って機能を維持していた。
 
 今回はそういう事態は無かったようだが、もし長期の停電になったとしても通信機能が活きていれば、バックアップ電源(通常8~24時間くらいは保つ)で支えているうちに、データやタスクを他のセンターに移すことができる。

 それにしてもデータセンターが「電力喰い」なのは明らかである。当然、環境に優しいデータセンターを求める声はある。いかに環境負荷が低いか、そのひとつの指標がPUE(Power Usage Effectiveness)である。計算式は、

PUE=データセンターの総消費電力量/IT機器の総消費電力量

 となっている。データセンターはサーバー・ストレージ・ネットワーク機器の固まりであるから、これらが電力を喰うのは当たり前である。しかし、その他の設備も電力を喰う。もし、その他の設備が無ければ PUE=1.0となって、これにどれだけ近づけられるかを問うのがPUEの意味だ。

 では、その他の設備とは何か。大物のひとつは空調である。IT機器は大量の電力を喰うと同時に発熱もする。昔からIT機器の発熱問題はあって、いろいろな冷却方法が考えられている。学生のころ、冬の夜に計算機室に入って寝ていたことがある。特にプロッセッサーの後ろが暖かかったから。そのほか、照明、エレベータ、カメラなどの警備設備、勤務者用のOA機器、水周り・・・あげくカップラーメン用のポットなども電力を喰う。

 一般的なデータセンターのPUEを2.0程度と日本では考えているが、以前Googleの人に聞いたら1.2くらいだという。秘訣のひとつは、寒冷地に設置したり、建物に余裕を持たせたりして外気による冷房をすることで空調を全廃したこと。また、定常的な勤務者というのを置かず、人間関係の設備をぎりぎりまで削っていることがある。何台かの機器が故障したところで、すぐに処置はしない。定期検査の時にだけエンジニアが入り、故障した機器をまとめて取り替えるわけだ。
 

     f:id:nicky-akira:20190413155928p:plain


 さらに彼らの切り札は、外気冷房では手に負えないくらい温度が上がってきたら、データセンターごと電源オフするという荒業。冒頭述べたように、通信さえ活きていたら(普通活きているが)データとタスクを他のデータセンターへ送ってしまうのだ。しばらく冷ましておいて、適当な時期に再立ち上げすればいいという。

 Googleのデータセンターごと電源オフするという荒業、自由な発想から生まれたものだが、そんな社内環境を作っているのは侮りがたい会社だと思う。
 
<初出:2016.7>