Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

沖縄県民の選択

 9/30の沖縄県知事選挙は、普段あの地域に関心が低い人にとっても非常に興味深いものになるだろう。一昨年のトランプ大統領誕生の選挙、先ごろのカンボジアの総選挙、いずれも外国の勢力が投票に影響を与えたと言われているが、日本でそれが心配される最初の大きな選挙だからだ。

 

 4人の候補者があり、83歳の料理研究家の女性が「消費税30%にして、ベーシックインカムを実現」と面白い公約を掲げているが、どうみても前宜野湾市長佐喜眞候補と前自由党衆議院議員玉城候補の一騎打ちである。
 
 
 佐喜眞候補は宜野湾の名士で、その名を冠した美術館も普天間基地に隣接して建てられている。3度の市長選挙のうち2回はたまたま定宿「ムーンオーシャン宜野湾」に滞在していて、選挙事務所も見た記憶がある。普天間返還を前面に出して戦うにふさわしい、ある意味与党の切り札のような人材である。
 
 一方の玉城候補、議員辞職によって自由党衆議院議員は小沢党首だけになって会派が組めなくなってしまった。小沢議員が何度か沖縄入りしていたのは、本音では彼を知事選に出したくなかったからだと思う。

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 この選挙、公示前から何やらきな臭い。地元紙の世論調査では、玉城候補がトリプルスコアで圧勝というデータなのだが、それを鵜呑みにする関係者はいまい。オール沖縄寄りである地元紙を名乗られて、佐喜眞候補支持と言えた人が1/4いたと言う事の方が驚きである。玉城候補は中国の手先というデマも流れているし、新潮が「辺野古の隣に小沢議員の豪華リゾート物件」などと書きたてているのもわけが分からない。確かにカンボジアの例をとれば、中国がサイバー攻撃を含む種々の手段で県知事選挙に介入する可能性はある。
 
 投票まで10日あまり、まだまだいろんな「流言飛語」が飛び交うだろう。先日の名護市の市議会議員選挙は、辺野古反対派が少し議席を減らし半々になったそうだ。多分「半々」というのが、本当の民意であって、あとは当日の運次第なのでしょう。
 
<初出:2018.9>

災害対応緊急措置

 台風21号と北海道地震は個々にでも大きな災害だが、立て続けに起こったことでより深刻な打撃を列島に与えたようだ。直接的には21号の大雨で地盤が緩んでいたところの大地震で、地すべりや液状化は激しいものになっただろうし、間接的にはインバウンド受け入れ拠点の関西国際空港の機能と、一大観光地である北海道全土の魅力がそがれたことが上げられよう。

 関西国際空港は1本の橋梁でのみつながっており、この鉄道部分の復旧に来週までかかるというのは痛い。第一ターミナルも完全復旧も程遠そうだ。そこで、カンクウ便を、神戸空港伊丹空港に当座振り替えることが検討されている。僕自身利用した経験はないが、京都大で教授をしている友人は羽田・伊丹便で往復している。地下鉄一本で大阪市街に入れる便利な空港だ。市民からは騒音被害を懸念する声はあるが、市長は前向きらしい。カンクウ集中を回避して、インバウンド受け入れ態勢を重層的にするきっかけになるかもしれない。

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 一方北海道全域の電力不足は、もっと深刻である。すでに内陸では最低気温が氷点下になっているし、電力需要の増す冬は直ぐにやってくる。冬季に計画停電となれば生死に係る問題になる。かといって、今でもつなわたりの電力供給では、再度ブラックアウトを起こしてもおかしくない。苫東厚真火力の復旧が待たれるが、地震被害についての検査も未了で場合によっては全面稼動まで数ヵ月ともいう。

 新設の火力発電所は来年4月稼動だそうだから、冬季には間に合わない。現実的な解としては、泊原子力発電所の「暫定的な」稼動しかないように思う。すでにネット上を含めて多くの意見が飛び交っているが、僕は先日の記者会見で菅官房長官が「現在、原子力規制委員会で新規制基準に基づく安全審査中であり、直ちに再稼働をすることはあり得ない」と述べたことで、政府内では再稼動に向けた動きがあるように感じた。この言葉を裏返せば、「安全審査が済めば、(冬季に入る前に)再稼動することはありうる」と読めるからだ。

 インバウンド需要は所詮経済だけのことですが、冬季の計画停電やブラックアウトは人命に係ります。今度のの震災の犠牲者は41名でしたが、これに数倍する「震災関連死」は起きて欲しくありません。

 

<初出:2018.9>

ブリュッセルでもイタリアン

 さてベルギーから帰国の日、フライトは夜9時近くである。チェックアウト後、現地事務所の人と昼食に出かけた。さて、何にするか?おひとり様ではないが「孤独のグルメ」っぽいシーンである。昨年オランダのハーグでの似たようなシチュエーションでは、中華レストランで炒飯にした。

 
 現地の人のおすすめは、イタリアン。ライスメニューも豊富だったが、さすがに炒飯はない。似たようなものとして、リゾットを頼んだ。ベルギーもオランダ同様、北海のシーフードがポピュラーなので海鮮リゾットを選んだ。同様も何もない。ベルギーの北半分はオランダ語圏。なんで違う国なのだろうと思うくらいだ。
 
 やってきたのは、イカスミリゾットだった。大ぶりのエビが4匹のっている。パルメザンのようなチーズ粉が皿の端に見える。そのほか、ハード系のチーズの薄切りも入っているらしい。チーズとイカスミが混じって、コクがある。イタリアンというとトマトソースが多いが、僕はそれほど好きではない。イカスミのように、コクのある味は大好きだ。

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 エビも火を通しすぎずふっくらしているのに、カラも食べられるくらいの火は通っている。非常に微妙な火加減である。真っ黒なので、コメ自身はどういう色合いや照りなのかはわからない。短粒種で、ゆで加減はアルデンテだった。
 
 世界三大料理と言われるが、なかでもフランス料理はカジュアルではない印象がある。本当はカジュアルでおふくろの味っぽいものもフランス料理なのでが、僕らにはなじみが薄い。中華でなければ、やっぱりイタリアンですかね。ごちそうさま。
 
<初出:2017.12>

「人が替わる」シーン

 今回ブリュッセルへの出張、せっかく12時間のフライトでいくのだからということで、メインの会合のほかいくつかの会議を企画してもらった。公式会合では同時通訳がつくことが多い。個別団体・企業への訪問では、逐語通訳の人を現地で雇うこともある。仮に出席者の大半が日本人でも、全部英語でやりたいという人たちもいる。

 当時はそんなことはなかったが、"Brexit" 以降EUでの公式会合は英語ではなくフランス語にしようという話が持ち上がっている。英語の苦手な僕としては、むしろその方がありがたい。調子に乗って「ドイツ語でもかまわないよ~」などと(陰で)言うこともある。どのみち分からないから気楽なものだ。

 閑話休題。メインの公式会合では、当然資料は英語で作る。説明をするときに英語で話すか日本語で話すかを、あらかじめ通訳ブースの人たちに伝えておくことになる。先方は当然全部英語だが、日本側は僕のように日本語に頼る人ばかりではない。母国語並みに流暢に話せる日本人もいれば、カタカナ発音だけれどちゃんと通じる英語で説明できる人もいる。

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 僕自身も英語で話さなくてはいけないこともあるのだが、そういう時はカンニング・ペーパーを相当頼りにする。それでも、Q&Aになると文法でたらめでも、なんとか分かってもらえるように話すしかない。その時思うのは、英語の僕ってとっても頭が悪いなということ。あるいは、とっても直截的だよなとも思う。複雑な言い回しが出来ないので、YESかNOを言ってその理由付けの単語を並べるわけ。
 
 言語は人の考え方や性格にも多少の影響は与えるようだ。それを実感したのがこの時。会合で全部英語で話す人が、日本側からも何人かいた。そのうちの一人、海外経験の豊かな人で、英語はうまい。国内ではよく顔を合わせるのだが、英語で話すのを聞くのは初めてだった。非常にジェントルな人で、意見はもちろん言うのだが口数は少ないし声も小さく遠慮がちに話す。

 ところが、英語で話し始めたら驚いた。大きな声で食い入るように話す。体も前のめりになって、激しい口調で畳み掛けるように説明し続けた。あっけにとられているうちに、時間を(相当)超過して終了。帰りの車の中で「あの方、人が変わりましたね」と評判に。酒に飲まれて人が替わるヤツはたくさんいるが、言語が変わると人まで替わるというのは初めて見ました。
 
<初出:2017.12>

AV-8BハリアーⅡ

 沖縄本島東の太平洋で、海兵隊ハリアー攻撃機が墜落した。ホーカー・シドレー・ハリアー戦闘機の初飛行は1966年であるから、ちょうど半世紀前。艦載型(シー・ハリアー)も開発され、1982年のフォークランド紛争では、「ハリアー英国を救う」と活躍をたたえられもした。
 
 その後米国のマクダネル・ダグラス社が、ハリアーの改造に着手。アメリ海兵隊は1971年からAV-8A型ハリアー攻撃機の配備を始めた。現在使われているのは、1982年に量産配備が始まったAV-8B型ハリアーⅡだと思われる。それにしても、30年以上経った機体である。
 
◆AV-8B+ハリアー
 全備重量 約10トン
 最高速度 マッハ0.9
 航続距離 2,250km
 兵装 ミサイル・爆弾等6トン、25mm機関砲
 
 海兵隊が、ハリアーを使いたい気持ちはわかる。陸軍・海軍・空軍に続く第四の軍隊である海兵隊は、いろいろな紛争地に最初に乗り込むのがミッションである。それゆえ、陸戦・海戦・空戦のすべての機能を持っている。十分整備された環境でなくても、先陣を切って戦わなくてはならない。立派な滑走路が無くても運用できる戦闘機/攻撃機は不可欠だ。

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 スペックを見ると、制空戦闘機としてはほぼ役に立たないのが分かる。亜音速では、おおむね倍の速力を持つ中国のJ-20に襲われたらひとたまりもない。それでも、急造飛行場やヘリポートで運用できる戦闘攻撃機が存在していることが重要なのだ。
 
 海兵隊というのは、非常に頑固な組織だ。いまだにM-60戦車を使っていたりする。その辛抱強さには敬意を表するが、どのような事態に陥っても、ミッションを果たすということかもしれない。最新鋭の機器にはサイバー攻撃によって無力化されるリスクもある。本当にそう思っているかどうかは別にして、 古いものをそれなりに使う姿勢には、うなづけるものがある。
 
<初出:2016.9>