Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

「人が替わる」シーン

 今回ブリュッセルへの出張、せっかく12時間のフライトでいくのだからということで、メインの会合のほかいくつかの会議を企画してもらった。公式会合では同時通訳がつくことが多い。個別団体・企業への訪問では、逐語通訳の人を現地で雇うこともある。仮に出席者の大半が日本人でも、全部英語でやりたいという人たちもいる。

 当時はそんなことはなかったが、"Brexit" 以降EUでの公式会合は英語ではなくフランス語にしようという話が持ち上がっている。英語の苦手な僕としては、むしろその方がありがたい。調子に乗って「ドイツ語でもかまわないよ~」などと(陰で)言うこともある。どのみち分からないから気楽なものだ。

 閑話休題。メインの公式会合では、当然資料は英語で作る。説明をするときに英語で話すか日本語で話すかを、あらかじめ通訳ブースの人たちに伝えておくことになる。先方は当然全部英語だが、日本側は僕のように日本語に頼る人ばかりではない。母国語並みに流暢に話せる日本人もいれば、カタカナ発音だけれどちゃんと通じる英語で説明できる人もいる。

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 僕自身も英語で話さなくてはいけないこともあるのだが、そういう時はカンニング・ペーパーを相当頼りにする。それでも、Q&Aになると文法でたらめでも、なんとか分かってもらえるように話すしかない。その時思うのは、英語の僕ってとっても頭が悪いなということ。あるいは、とっても直截的だよなとも思う。複雑な言い回しが出来ないので、YESかNOを言ってその理由付けの単語を並べるわけ。
 
 言語は人の考え方や性格にも多少の影響は与えるようだ。それを実感したのがこの時。会合で全部英語で話す人が、日本側からも何人かいた。そのうちの一人、海外経験の豊かな人で、英語はうまい。国内ではよく顔を合わせるのだが、英語で話すのを聞くのは初めてだった。非常にジェントルな人で、意見はもちろん言うのだが口数は少ないし声も小さく遠慮がちに話す。

 ところが、英語で話し始めたら驚いた。大きな声で食い入るように話す。体も前のめりになって、激しい口調で畳み掛けるように説明し続けた。あっけにとられているうちに、時間を(相当)超過して終了。帰りの車の中で「あの方、人が変わりましたね」と評判に。酒に飲まれて人が替わるヤツはたくさんいるが、言語が変わると人まで替わるというのは初めて見ました。
 
<初出:2017.12>