Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

中国製5G製品の調達

 第5世代移動通信システム(以下5G)の実用研究が世界で進められている。純粋に技術としてみると、従来の4G(一般に厳密な4Gではない、3.9GのLTEなども含む)と比べると、以下のようなケタの違う高性能を発揮する。

 ・超高速の通信速度 10Gbps(LTEの100倍)
 ・多数デバイス同時接続 1km四方に100万台(LTEの100倍)
 ・超低遅延 1ms以下(LTEの1/10)

 総務省は2020年のオリンピック/パラリンピックには実用化しているというのだが、これがどのように社会を変えるのかは良く分かっていない。光の部分の前にすでに影の部分の議論が出てきていて、流れるデータ量が格段に増えること、それをハンドリングするソフトウェア等が複雑化することから、より高いセキュリティ性を求める声が上がっている。
    ã¤ã¡ã¼ã¸ 1

 特に「国家レベルのサイバー攻撃」にどう対処しようかと苦慮している政府者や、重要インフラ事業者は多い。そうは言っても5Gの流れを止めることや自らは背を向けることができないので、米国政府は中国ベンダーの製品を調達しないと先ごろ宣言している。今回オーストラリア政府もこれに倣ったというのがこの記事である。ファーウェイとZTEの5G関連製品の調達をしないよう、通信事業者に指示したとある。

https://wired.jp/2018/09/03/australias-ban-on-huawei/ 

 


 本来どのような部品を使おうがシステム全体でセキュリティチェックをするべきなのだが、5Gシステム自体が複雑すぎてチェックしきれないというのが本当のところだろう。日本でも経済産業省は、米国等の流れに乗ろうとしているが、総務省はそれだと(安価な機器が調達できず)日本での5Gの普及が遅れることを危惧しているらしい。

 しかしこの記事にもあるように、世界のサプライチェーンは複雑に入り組んでいる。最終アセンブラーが中国企業だとしても、キモのLSIは米国製、日本製だったりするし、あるいはその逆もあり得る。この話は米中貿易戦争とはちょっと違った次元の話で、中国に通信を盗聴されることを恐れている安全保障のきらいがあるのだろう。でも、LSIレベルまで落として中国製品排除といっても、現実には難しいでしょうね。

 

<初出:2018.9>