昔もこういう話があったなと思い、本棚を探したら本書が出てきた。以前「プロを目指す人たちへの遺言」と題して紹介した、糸瀬茂の編著である。これは何を取り上げているかというと、2000年のそごう破綻処理の話である。「交通のよい最適地に最大級の百貨店をつくる」という戦略で、事業を拡大していたそごうの経営危機が表面に出たのは1999年。
社長交代・店舗閉鎖・従業員のリストラなどを行ってきたが2000年4月に至って、グループ全体の整理措置で7,000億円の損失が出ることが明らかになった。そこでそごう経営陣が打ち出したのが、債権者である銀行群に対して6,390億円の債務免除(要するに踏み倒し)を求めるというものだった。
いわゆる不良債権問題の一環なのだが、筆者が言いたかったことはタイトルのそのまま表れている。いくら大きすぎて潰せない(Too Big to Fale)とはいえ、デパートを税金で救うというコンセプトの国はいかがなものか、ということである。
少し時代も違いシチュエーションも違うけれども、今回の東芝の件はどうなのだろうか。大きすぎて潰せないことのほかに、技術流出を恐れるという。しかし、少し立ち止まって考えてほしい。上場会社(いつまで東芝がそうかは別にして)は誰にでも売りますよと言っているのが、「上場」の意味である。国家で守りたいなら非上場にしておくべきではないのか?
さらに言うなら、半導体を始めとする日本の「Rising Sun」時代の技術は、決して企業だけが持っていたわけではない。企業に属した個人についているものもあるし大きいように思う。それらが流出したのは、日本(米国もだが)の企業を定年等で追われた人たちがサムスンなどに流れたことにもあると思っている。本当に守るべきは企業ではない、人材なのだと僕は言いたいですね。
<初出:2017.3>