この夏も災害が多かった。特に経験したことのない豪雨によって、河川が氾濫、道路等が冠水、鉄道網が寸断されるなど市民生活に大きな影響(というか被害)があった。もちろん気候変動による原因もあろうが、日本の都市や居住区が広がり過ぎたことも原因の一つと思われる。
昔岐阜県のある地域で遊水地を宅地にして売ってしまったケースがあって、これなどは犯罪に近いのだが、そうでなくてもハザードマップを意識しないで宅地化が進められたところは少なくない。砂防ダムをつくるなどして災害対策に充ててきたのだが、地方自治体の財政問題もあってそろそろ限界にきているように思う。
この記事は「終の棲家」をどうするか、というテーマでまとめられたものだが、ここに今後の都市計画の本質が現れている。「駅から徒歩7分以内」に住むことの希望が増えているとして、最後に現在の市街地⇒居住誘導区域⇒都市機能誘導区域とエリアが狭まっていくイメージ図が付けられている。
政府は2014年の都市再生特別措置法改正によって、自治体が「立地適正化計画」を進められるようにしている。要するに拡大してしまった居住域を制限し、「中心部にしか「都市機能」は持たせません。その周辺に居住できるようにはしますが、そのさらに外に住むことはあきらめてください」という意図である。昔から「コンパクトシティ構想」はあるのだが、住民の意思に反してインフラを止めるようなことは出来ず、実効ある手段がなかったことへの反省もあるだろう。
最後のイメージ図は、数年前に富山市の森市長、神田(当時)副市長に見せてもらった、「串と団子のまちづくり」の絵にそっくりである。富山市では、鉄道の駅や主要なバス停から半径500m以内の住居を優遇するやや極端な政策をとってコンパクト化を進めていた。不動産業界で言う徒歩1分は80mだから、7分以内と言うのは半径560mの円内になり数値的にも一致する。このような動きを上記特措法改正で後押ししようというのだろうが、まだ350自治体でしか進んでいないのは悩ましい。
この法律は有力なコンパクトシティ推進の方法なのですが、もうひとつ必要なのは市長や議会の意思である。自分の住居が居住誘導区域から外れたといって怒鳴り込んでくる住民(有権者でもある)に対してちゃんと説明/説得ができるかどうか、行政官含めて覚悟が問われますね。
<初出:2018.8>