韓国の文大統領は「最低賃金の引き上げ」という目玉政策にこだわり、昨年政策的に賃金を引き上げたために零細企業や自営業者に負担がかかり100万件の廃業を引き起こした。にもかかわらず、今年も10%ほどの値上げを決め、現場では悲鳴が上がっている。企業だけではなく文大統領の支持層でもある労働者も、賃金が上がるのはいいが雇止めや倒産に見舞われてはたまらない。
この問題などは比較的単純な構造だが、複雑に絡み合った世界経済を何らかの目的でいじっても、効果が得られるとは限らない。往々にしてブーメランのように跳ね返って来て、効果がないどころかより悪い結果をもたらすことも少なくない。トランプ先生も、威勢はいいのだが同じワナにはまっているようだ。
対中国の貿易戦争を仕掛けたトランプ先生、中国も黙っているわけはなく、米国産大豆に25%の関税をかけてきた。中国は大豆の米国に対する依存度が高く、代替の供給元を探すのに苦労しているようだが、出荷する側の米国農家の苦悩は深い。
さらに(市場でダブついてくるからだが)価格の下落が追い打ちをかけ、米国中部の広大な農地を持つ大豆農家は甚大な被害を受けているとこの記事は言う。お酒を呑めないドライカウンティを含むこのエリア、トウモロコシや大豆、小麦などを作っていて大都会の喧騒とは無縁のところである。人々もスレていなくて、僕たちが持つ「やり手で強硬、狡猾な面もあるタフネゴシエーター」の米国人とは違う人種だと思っていい。彼らが支持したトランプ先生が、もともとグローバル化で生活が苦しくなっていた彼らを直撃するブーメランを放ったことになる。
世界経済が、トランプ政権に翻弄されているという記事があった。それは事実ですが、極めて複雑な生き物である世界経済にイタズラをすると、因果応報、自分に戻ってくることを誰か教えてあげてください。
<初出:2018.8>