Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

Hochster城への旅(後編)

 空堀を渡り壮麗な門をくぐると、そこは「本丸」広場。ひときわ高い塔のふもとに立派な宮殿様の建物があって、これがHochster城の中央御殿。御殿の前には広いテラスがあって、庭園が整備されている。テラスの向こう側は、城壁の上部になっている。壁の高さは、10m以上あるだろう。壁の下は遊歩道や公園になっているが、それはマイン川沿いに広がっている。

 

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 テラスからは、眼下にマイン川が眺められる。マイン川の中央までの距離は、50mもないだろう。旧式の弓矢でも十分届く距離だ。優雅なテラスだが、幅は50m以上ある。ここに射手を並べれば、川を上り下りする船を射すくめることができるだろう。
 
 高い塔に監視要員を置いて、遠くにいる船も見つけられる。接近する前に、射手を配置に着けることができるだろう。といってもこの城は、戦闘用の城ではない。
 
 昔ライン川上り(下りではない)をしたとき、川の中州に建てられた「プファルツ城」を見たことがある。小ぶりの城だが、基礎部分が船のような形をしている珍しいものだ。そのあたり、ライン川の川幅はかなり広いが、中央に城を建てれば、川全体を影響下に置くことができる。
 
 この城の存在意義は、戦闘用/籠城用のそれではない。川が天然の堀として使えると言っても、それに拠って戦いを有利にするという目的は、本来のものではない。この城の目的は、「収税」である。川を上り下りする船などから、通行税をとるのである。
 
 Hochster城は、ニッダ川とマイン川が合流した地点のすぐ下流にある。ここの領主は、監視塔と威嚇用のテラスを作ることで、通行税のとりっぱぐれがない設備を整えたのだろう。しばらくテラスから川を眺めそんなことを考えていたが、さて帰ろうと今度は空堀の方に降りて行った。
 
 紅葉というのだろうか、空堀の左右の壁にはツタ様の植物が繁っていた。空堀は「本丸」を取り囲むようにぐるりと回って、城壁の下部の小さな門へと続いていた。門をくぐると、目の前に再びマイン川。天候にも恵まれ、静まりかえった古城の旅を満喫しました。近くにまだいくつか古城があるようですから、また探して行ってみたいですね。
 
<初出:2017.11>