富士フィルムという会社は見事な転進を見せた企業として、経済史に名を残すだろう。名前からしてアナログフィルムが主力だったのだが、昨今のデジカメの普及やスマートフォンのカメラ性能の向上で写真用フィルムの売り上げは激減しているはずだ。
富士フィルムは今やヘルスケア銘柄である。フィルムという化学材料についてのナレッジを十分に生かした転進と言えよう。その富士フィルムが、かねてからの計画であったろうが、XEROXを買収するという記事があった。
かつてはコピー機の代名詞だった、ゼロックス。課長が「これを2部ゼロックスしてくれ」と部下に指示するように、コピー=ゼロックスだった。その後、キャノンやリコーといった競合が台頭、家庭用プリンタの価格下落と普及もあってゼロックスの経営は苦しくなっていった。しかし昨年サンノゼのパロアルト研究所に行った時は、同社のR&D能力の高さを実感したものだ。知財としては「腐っても鯛」を越える価値があると思う。
だから富士フィルムの戦略は正しいと思うのだが、買収された側の士気の維持や人材流出をどう止めるかは大きな課題だ。これからこのような大型のM&Aは日本でも日常化するだろう。それをうまく乗り切れた企業が、グローバル市場への挑戦権を持つことになる。
10年以上前、富士ゼロックスのロゴが変わった。その時同社の知人が怒っていたのを思い出した。思えばそのころから、この買収劇は企画されていたのだろう。そのロゴは「FUJIxerox」、FUJIは大文字、xeroxは小文字なのです。
<初出:2018.2>