市長と話していてよく出てくる話題が「高齢者に元気になってもらうこと」である。高齢化そのものは止めようがないが、健康であれば医療費が少なくなり、自治体の経営が改善するということ。そこで地元の大学の先生が言う「人間は毎日8,000歩以上歩けばおおむね健康、3,000歩以下だと病気になりやすい」という主張を容れ、高齢者に歩いてもらおうと努力しているようだ。
前回のべた市電の環状線復活も、その一環。まず出不精になると不健康を引き起こすので、出歩きたくなるような街づくりが重要である。環状線の駅ができたその真ん前のスペースが空いていた(どうせデパートでも潰れたのだろう)ので、そこをガラス張りの全天候広場「グランドプラザ」として時々イベントをやるようにもした。
このエリア「総曲輪(そうがわ)」という繁華街である。もとは、富山城の外郭の「曲輪(くるわ=郭)」だったに違いない。面白そうな店が並んでいる。ここに4輪の歩行補助具を置いて、高齢者が歩き回る助けにする実験もあった。この補助具、無線通信機能で位置を特定できるから、利用者がどういうルートで繁華街を巡ったかが「ビッグデータ」として取得できる。
周辺部に住む高齢者にも特典がある。途中下車をしないで市街の中心部までバスに乗るなら、片道100円という破格値。通常なら1,000円を超えるところも多いので、これは思い切った優遇策だ。それでも市長曰く「クルマで来て、買い物だけしてさっと帰られたら消費は伸びない。運転もしなくていいし、交通費も安かったので一杯呑んで帰ろうと思ってくれればいい」とのこと。
さらに市内の動物園、これも孫を連れてきた祖父母であれば入場無料にしていた。孫との交流もタダとなれば行こうかと言う気になろうし、これで歩いて健康にも成るという算段。思わず「祖父母と孫だというのはどうやって特定するのですか?」と聞いてしまった。アイデンテフィケーションを常に考えているIT屋の悪いクセである。即座に「それらしい組み合わせでOKにしているよ」と言われて、白旗でした。
<続く>