富山市で市長選・市議会議員選挙が行われた。市議会については、政務活動費の不正受給も問題で14人もの辞職者を出した「話題」の街である。不正による辞職者も含めて定数38に対して58名が立候補、不正関与を問われた8人中5名は当選している。地元優先の癒着と見るか、不正は瑣末なことと見るかは判断が分かれよう。
一方、市長選の方は無風だったようだ。各党相乗りで現職の森雅志氏が悠々当選。平成大合併前にも1期務めているので、都合5期目の市長職となる。森市長は「コンパクトシティ政策」を掲げ、かなりの成功をおさめている稀有な首長である。
コンパクトシティにしなければ、ライフラインは際限なく広がりやがてはその維持に腐心することになるのはあきらかである。しかし、実際にはより地価の安いところに住宅が拡散してゆく現象を止められない。今回の豪雨で、またも広島市安佐南区に避難勧告が出た。悲惨な土砂災害があったところで、かつ可部線の復活延伸がなされたところである。
富山県は冬こそ太平洋側に比べて厳しいが、総じて豊かなところである。旧家なら廊下だけで何十畳もあるともいう家の広さ、ひとり1台は自家用車を持つのが普通などあり、よく豊かな県ナンバーワンに選ばれる。その中核である富山市だが平成大合併で面積が増え、岐阜県と隣接するほどになってしまった。
森市長がまず取組んだのが市内の見える化、特に人口分布である。当時「マイナンバー」はないのだが、住民基本台帳はあった。この中には基本4情報が含まれている。つまり、氏名・住所・性別・生年月日である。富山市はこの情報を2次元地図にマッピングした。あくまで登録上の住所ではあるが、男性・女性の違い年齢の違いを含めて市内の人口分布が一目瞭然になるのだ。
コンパクトシティを目指すには、一般に中央部への投資を増やさなくてはならない。現に森市長も富山駅の南、富山城周辺にかつてあった市電の環状線を復活させている。そのような予算計上をすれば、周辺部が地盤の議員から「中央部偏重だ。周辺部にこそ投資が必要だ」とわめかれてしまう。しかし市長は上記地図を取り出し、高齢者の分布図を示す。明らかに高齢者は中央部に非常に多い。よって予算は成立するというわけ。
さらに高齢者関連施設を上記地図にプロットしてみると、高齢者は中央に多いのに施設は少し離れたところに分布していることもわかった。そこで中央部で廃校になった学校の跡地に、スパ付きの施設を誘致することにしたともいう。
<続く>