Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

覆面の道場破り

 囲碁のプロも匿名(というかハンドルネーム)で参加する、囲碁サイトがある。そこに登場した"Master" という名前の棋士がやたらと強く、60戦全勝ともいう。先日、Googleが正体を明かして"AlfaGo" の改良版だということが分かった。道場破りの覆面をはいでみたら、ロボットだったわけ。

 小学生のころ将棋を始めながらどうしても勝てない相手がいたので止め、中学・高校は麻雀とか花札にウツツを抜かして大学時代に囲碁を始めたのが僕のゲーム歴。シミュレーション・ウォーゲームを除けば一番好きなのは囲碁で、たまに囲碁ソフトを相手にしてみることはある。"AlfaGo" クラスをソフトと呼んではバチがあたりそうだけれど、ソフトも異次元の強さになったものだと思う。

 IT業界には囲碁・将棋の強い人はたくさんいる。昨日話をしていた人が将棋の五段だそうで、強い将棋ソフトとどう戦うかという話になった。相手がソフトか人間かに関わらず、彼は1局の将棋を序盤・中盤・終盤に分けて考えるという。(これは囲碁でも同じだ)

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 肝心なのは形勢判断、自分が優位となれば相応の戦術がとれるし、不利となったらそのような指し方がある。これを間違えると勝てるものも勝てなくなる。将棋では形勢判断の基準は3つあると、彼は言う。

 
 ・コマの損得
 ・彼我の王の堅さ
 ・コマの働き

 この3つを、序盤・中盤・終盤で比率を変えて数値的に判断することになる。恐らく序盤ではコマの損得(最初は1歩得でも大きい差)、終盤は王の堅さが大きいように思う。さて将棋ソフトと対戦するにあたり、序盤は定跡があるので間違えないようにソフトについてゆく。このあたりではソフトは大きなミスをしない。また終盤になると詰将棋のようなもので、理詰めで決まってしまう。ここでもソフトは間違えない。

 だから、人間の勝機は中盤になるというのが彼の理論。定跡を一杯覚えていても、詰将棋アルゴリズムが優れていても、中盤という形勢判断の数値化しにくい時期に一気に逆転してしまうのがコツのようだ。さてこれと同じ理屈が"AlfaGo" に通用するでしょうか。何年かしたら人間には勝てない領域に行ってしまうのだろうから、しばらくは見ものですね。
 
<初出:2017.1>