「ミスター全総」と呼ばれた、下河辺元国土交通事務次官の訃報が伝えられた。全総こと「全国総合開発計画」は、1962年の第一次から1998年の第五次まであったがその全てに関わったという伝説の人である。十年近く前、ある業界団体の勉強会に呼ばれた。今後の国土利用のあり方を見直す会合だという。スマートシティなる言葉を考え始めた時だったので、勉強になるだろうと参加することにした。
・(中曽根内閣の)第四次ゼンソーの時代が一番良かった。これに戻すべきだ。
・ゼンソーを策定、推進するのは国土庁だった。省庁再編で失われたのが悔やまれる。
・せめて第五次ゼンソーのころの公共投資程度には(予算を)復活させたい。
などとのたまう。配られた資料を読んで、これが「全国総合開発計画」のことだとしばらくしてから理解できた。なるほど均衡ある国土の発展か、まさに今起きている問題への対処法だよな・・・と思っているうちに第一回の会合は終了。
第二回目までは少し間が空いたので、関係する本を(Book-offで)探して読んでみた。国土の均衡ある発展のためには、稼いでいる首都圏等から過疎化が進む地方へリソース(ヒト・モノ・カネ)を廻さないといけない。多くの書籍は東京一極集中には否定的だが、地方への過度な資源移転はB/C(Benefit/Cost)の観点から不合理だとも言っている。
1962年のような高度成長期前であれば、重要な考え方だったであろう。しかし、今はそういう環境ではない。堺屋太一先生は、右肩上がり経済と右肩下がり経済では、求められる人材像が違うという。前者では、やる気があって能力のない人間が無謀な投資をしてもいずれ需要が追いつくし、インフレ傾向なので先行投資として意味がある。しかし後者では、決してそういう人材を登用してはならないのだそうだ。理想的なのは、やる気はないが能力のある人間とのこと。
少し半可通的な知識を付けた僕は、中央から地方に資源をどうやって移すかを議論している人たちに、違った観点から疑問を投げかけることにした。
<続く>