Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

リチウムイオン電池の弱点

 フルメカニカル・カメラである"NIKON F2" でも、露出計に使う小さな電池は内蔵していた。その後、電子シャッター・自動露出・自動焦点と機能が追加されて、フィルムカメラにおいても電気回路や電池が大きくなったことは以前紹介した。1980年代後半には携帯電話の普及も始まり、持ち運びを前提にしたノート型パソコンも増えて来た。これらの機器を十分に使うためには、長時間使える電池の開発が必須だった。

 乾電池という案もあったが、できれば充電再利用可能なものがいい。候補として1985年に基本概念が確立した、「リチウムイオン二次電池」が挙げられた。長所はいっぱいある。

◆エネルギー密度が高い(これまでに知られている二次電池中最高)

◆高電圧を出せる(乾電池の1.5Vを上回る4V級)

◆寿命が長い(500回以上の充放電サイクルに耐えられる)

◆高速充電、大電流放電が可能

 そこで幅広い電子・電気機器に搭載され、2010年にはリチウムイオン二次電池の国内市場は1兆円を越えたのである。さらに電子機器とはとても言えない分野にも適用が始まった。まずは、ハイブリッド・カー。先端的で、エコであるという感覚からハリウッドのスターたちも「ガソリンガブのみ車」からこれに乗り換えるブームを呼んだ。

 しかしここで「理想の電池」の弱点が見えてきた。振動に弱いのである。ノートパソコンなどとは比べ物にならない衝撃が、車載電池にはかかる。それも継続的に。その結果、電池が過熱し発煙する現象が起きた。自動車メーカーや電池メーカーは、その対策に追われたようだ。明確な問題を与えられると、日本の技術者は力を発揮する。発煙事故は終息した。

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 ところが、全く別の機器でこの現象が再発する。それは最新鋭の中型旅客機B-787。機体に繊維ファイバーを使い、エレクトロニクスを一杯積み込んだ、メカニカルではない飛行機である。カメラの例でも分かるように、電池の必要量が増している。一方でクルマの衝撃に耐えるように設計されたリチウムイオン二次電池だが、クルマとは比較にならない衝撃が待っていたのかもしれない。

 赤い日系航空会社の新鋭機B-787がボストンで発煙したのを皮切りに、青い日系航空会社も含めて不具合がいくつか出た。ある意味初期不良のようなものだが、クルマの先例を十分加味しての設計だったかどうかはわからない。まあ、これもある程度の期間を費やして終息した。

 今預け荷物含めて、飛行機に持ち込み禁止措置が採られているサムスンの「ギャラクシーノート7」。この発煙・発火原因をちゃんと聞いたわけではないが、おそらくは電池系統だろう。もしこれがリチウムイオン二次電池であれば、3度目も先例は生きなかったことになる。
 
<初出:2016.9>