Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

脅威の方程式

 フロリダのナイトクラブで銃撃事件があり、100名以上の人が死傷した。報道によると使われたライフルはAR-15、あとサイドアームも持っていたとのこと。(映像をちらりと見ただけなので確信はないがグロッグ17みたいだった)

 単独犯で、爆弾や手榴弾クレイモア地雷のような兵器を使った気配はないのに、50名もの死者というのはどういうことかわからなかった。AR-15の連射性能は900発/分。30発入りの弾倉ひとつを2秒で撃ちつくす計算だ。狙われた人たちが大人しく座っているわけでもないだろうから、大勢を倒せる兵器ではない。

 それにAR-15の弾丸は5.56mmの高速弾で、貫通力は高いものの小口径なので人体へのダメージは比較的少ない。よくテロリストが使うAK-47は7.92mm。こちらが「殺す」銃なら、AR-15は「傷つけ戦闘力を奪う」銃である。だから死者の多さに驚いたのだ。

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 分かってきたのは、容疑者(というより犯人)が半自動射撃をしていたこと。ひとりひとり狙って撃ち、倒れている人にとどめを刺していたらしいこと。有名な民間警備会社(まあ傭兵ですよね)での勤務経験があること、だった。これならわかる。

 
 素人の単独犯は、通常激情に駆られている。ターゲットをみたら全自動でぶっぱなすだろう。2秒で弾丸が尽き、あわてて弾倉を交換するうちにターゲットが逃げていく。しかし、プロなら半自動射撃でひとりづつ確実に倒していく、とものの本に書いてある。

 それはともかく、今回の事件がそのまま大統領選挙の争点になりそうだ。ヒラリー氏は「銃の規制」、トランプ氏は「イスラム教徒入国阻止」を挙げて、これで国を守ると言っている。

 脅威 = 武器の威力 × 使うものの意思

 というのが単純化した方程式で、ヒラリー氏は「武器の威力」を減らすことを、トランプ氏は「使う意思をもつもの」を減らそうとしているわけだ。もちろん、どちらもゼロにするのは難しい。双方を少しでも減らしてゆく、地道な努力が必要だろうが、選挙戦となると、二者択一的な議論になるのが心配である。
 
<初出:2016.6>