Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ボーデン湖岸の町

 スイス・ドイツ・オーストリアにまたがり、南にアルプスを望む湖、ボーデン湖。ドイツ語では "Bodensee" ボーデン海という。何の因果か幸運か、僕はそこで20年ほど前に年の1/4を過ごすことなった。僕にとっては初めての本格的な海外業務だったし、そこで教えられたことも多かった。

 
 街の名前はコンスタンツ(ドイツ語表記で Konstanz )。有名な、コンスタンツ宗教会議があったところだという。フスというチェコ出身の宗教改革者が処刑されたらしい。それはともかく、南ドイツの保養地で、人口は8万人前後なのに、レストランやホテルは非常に多い。日本ではほとんど知られていないが、ドイツでは10指に入る観光地である。
 
 城壁のあとも残る旧市街も見どころだが、やはり目玉は湖。東西に長く伸びた形状で、60km×10kmほどの大きさがある。以前チューリッヒで「ボーデン湖を自転車で1周する」という旅行者に会ったが、なかなか大変だろうなと思う。
 
 ボーデン湖の標高は約400m。オランダで北海にそそぐ「ライン川」の源流である。コンスタンツはその西側の港町、スイス国境の町でもある。港の象徴が、インペリアという巨大女神像。女神像というには、両手に醜悪なガーゴイル様の小人を乗せていて不気味でもある。一説にはコンスタンツ宗教会議に参加(?)した高級娼婦だったという。宗教会議と娼婦というのもいかがなものかと思うが、なかなかにセクシーな像である。

    f:id:nicky-akira:20190405060605j:plain

 風光明美なところではあるが、日本人になじみのない理由は交通の便だろう。フランクフルトもミュンヘンも遠い。飛行機を降りて8時間以上列車に乗るのでは、旅行先として候補には上がるまい。ところが裏技がひとつ。スイス国境の町なので、チューリッヒが近い。スイス航空で成田から12時間、チューリッヒ空港からはスイス国鉄でローカル線に乗って1時間でクロイツリンゲンに着く。クロイツリンゲンとコンスタンツは、背中合わせの町なのだ。
 
 第二次大戦末期、米英軍の爆撃機が大挙ドイツを襲った。この時、コンスタンツでは灯火管制をせず夜でも明々と灯をともした。爆撃機は、そこをスイス(永世中立国)と誤認して爆撃をしなかった。ゆえに、古い建物も被害なく現存していると現地の人は自慢する。チューリッヒを始め、スイスの過半はドイツ語圏。スイスのようなドイツの町、それがコンスタンツである。
 
<初出:2016.7>