Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

司法制度改革のイシュー

 昨年は死刑の執行が多かった。一連のオウム事件の死刑囚を一斉に執行したこともあり、15人というのは近年のタイ記録らしい。それでも法務省は一つの目安としているらしい「死刑囚100人」を超えた110人が刑が確定しながら執行されない状態に置かれている。そういう年だったからと言うわけでもないが、本棚から青木理著「絞首刑」を引っ張り出して読んでみた。

 
 多くの先進国が死刑制度を廃止する中、日本がそれを存続させていることは他国からの非難の材料にもなっている。ただ死刑制度がない国には「本当の無期懲役」があって、「懲役/禁固300年」などという判決もある。どう考えても更生の道がない被告人には、死刑でなければこれしか対処する方法はない。
 
 一方日本の「無期懲役」は15年以上のものを言うから、減刑や恩赦などされると10年そこそこで出所してしまうかもしれない。減刑等が無くても、25歳で収監されたら40歳では一般社会に復帰することになる。再犯率が高い犯罪者だとすると、社会の不安は大きい。

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 だから15年の懲役以上の何かの刑があれば、死刑廃止もしくは死刑判決を減らすことができるのではないかと考えられる。そうしたら、昨年末ジャーナリストの江川紹子さんの面白い意見を目にした。
 
 
 なるほど「死刑の執行猶予」とは面白いアイデアである。現行法制では、執行猶予とは比較的軽い罪にしか適用されない。それを一番重い罪に持ってくるなどは、法律の専門家では思いつかないことかもしれない。僕も、江川さんの論旨に100%賛成と言うわけではない。執行猶予中の死刑囚が、助かりたいがために必死の演技を猶予期間中にするかもしれないなど、懸念事項はある。
 
 そうはいってもいいアイデアだから、是非法曹界で真剣に議論いただきたい。死刑と無期懲役の間隙が広すぎるのが、日本の刑法の課題だと思っていますので。
 
<初出:2019.1>