Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

海岸国家アメリカ

 いろいろな選択肢があり噂があったアマゾンの第二本社だが、ニューヨークのロングアイランドとワシントンDC付近のアーリントンに決まった。アーリントンは例の軍人墓地のあるところで、ポトマック川を挟んでDCの中心地モールの向こう岸にある。DCの地下鉄では2駅くらいで行ってしまう、明らかにDC圏内だ。

 
 
 なぜこの2カ所が選ばれたかというと、東海岸の政治・経済の中心地に本社を置き、優秀な人材を集めたいという理由だとこの記事は言う。すでに優秀な人材が集まっているところでなければ、人材は育たないし集められないということ。積極的な誘致活動をして有力な候補地と言われたインディアナポリスでは、この条件が満たせなかったのだ。(無念なり、アルバート・サムスン
 
 以前「東海岸と西海岸がくっついていてくれたら、移動が楽だったのに」というエスタブリッシュメントの言葉を聞いたが、あながち内陸の人口の少ない州を軽視した驕りとばかりは言えない。両海岸間の6~7時間のフライトは結構こたえるのだ。物理的にだけでなく、この記事にあるように人口3,950万人のカリフォルニア州でも58万人のワイオミング州でも上院の定数は2人づつだ。人口に比した政策ができるとは思えない。

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 ロングアイランドは金融はじめ経済の中心地だし周辺の人口も多いから当然本社を置くに値する場所なのだが、アーリントンは市場というよりは政策へのアプローチが狙いだろう。GAFAのような企業は次々と新しいビジネスモデルやデータ活用を考えないとすぐに新興勢力に取って代わられてしまう。しかし新しいそれらのものは法的規制の網がかかっていない領域にあることも多く、アイデアをビジネスとして実現するには、行政機関や立法府との水面下での交渉(ロビー活動ともいう)が必須だからだ。
 
 この記事にあるように、米国では地域の分断、企業の分断、住民の分断が日本以上の規模/速度で起きている。取り残された人たちはもちろん大変だが、時流に乗っているはずの人たちもちょっと油断すると転落してしまう。前者の不満と後者の不安を抱えて、米国社会の病理は進んでいくのでしょうか。
 
<初出:2018.12>