Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ダボスの夕暮れ(前編)

 いろいろ聞こえてくる情報を総合すると、世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議は、今年は不調に終わったらしい。トランプ先生はもちろんのこと、メルケルマクロンという独仏の首脳が出席できなかったのがこれを象徴している。ダボス会議の目標はひとつの世界経済の達成、つまりグローバリゼーションの究極の形を求めることである。

 

 歴史的に見ると、第一次世界大戦が悲惨な傷跡を残して終わり、「二度とこんなことやだ」として国際連盟を作った。ところが、いいだしっぺの米国が参加しないこともあってこれが機能せず、再び第二次世界大戦を招いた。第二次世界大戦後、「本当にやだ」として国際連合ができたのだが、直ぐに冷戦期に入ってしまう。それでも両大戦の引き金になった国である独仏は、「二度と戦争しない」と誓ってEU(Europa Union)を作った。最近マクロン大統領が「欧州軍創設」などと言っているが、EUは基本的には経済統合。

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 経済がひとつになれば戦争が出来なくなるとの考えで、東西ドイツが統合されても二度と(三度と?)ドイツに戦争をさせないようにするのが目的だった。EUは加盟国を増やしながら経済的結びつきも深めた。数年前からEU政府が進める「Digital Single Market」構想も、デジタルデータで各国の経済を直結してしまおうという試みだ。

 
 WEFのダボス会議は、EU域にとどまらず地球全体をひとつの経済圏にくくってしまおうとして、その思想に共鳴する知の巨人や大国の指導者を呼んで華々しく「いいっぱなし会議だが影響力のある」存在になっていった。偉い人の講演を拝聴するスタイルではなく、壇上の講演者と聴衆が距離を詰め、シナリオにはこだわらず自由闊達に意見を交わす形である。
 
 日本人には英語と言う壁もあって馴染みにくい会だったが、それでも参加する人も増え中には企業の幹部教育の場と考える経営者も出てきた。政治・経済を話し合うだけでなく、カフェや小部屋で商談も進んだという。こっそり国際的なM&Aが企画されたこともあっただろう。
 
<続く>