Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

T7やT20の意味するもの

 来年6月には、日本で「G20」が開催される。日本はすでに議長国としての役割を果たすことになっていて、6月末のサミットまでいろいろなことをしなくてはいけない。Gは政府間の会合だが、これと並行して「B20」という産業界の会合もある。Gに産業界からの提言をすることから、3カ月前の3月中旬に会合が開かれ共同で提言を公表する運びである。

 
 Bのとりまとめは誰がするのかと言うと、今回の場合は経団連内にある事務局ということだ。アルゼンチンでの今回の米中対立を背景にした混乱からすると、残り3カ月は極めて短い。まあ時間があってもとりまとめは難しく、「B19」になってしまう可能性も十分ある。
 
 関係者に聞いたのだが、もうひとつ「T20」というのもあるらしい。G:政府、B:産業界に対してTってなんだっけと思ったら、シンクタンク(Think-tank)の集まりだった。「第五の権力:アメリカのシンクタンク」という書を読んだことがあるが、米国には幾多のシクタンクがあって政権や国会としかるべき関係を築いていて、政策決定にかなりの影響力を持つと言う。

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 僕自身はワシントンDCに出張した際、Center for American Progress、Heritage FoundationやCenter for Strategic and International Studiesに顔を出したことはある。彼らの主張や提言は、しばらく経って米国などの政策に反映されてくることがあるから、自分の専門領域については注目している。
 
 シンクタンクというのは、政党や産業界、場合によっては個人投資家などからの寄付で運営されることが多い。ただそれで足りないと、民間へのコンサルティングや行政からの調査委託で資金を賄うことになる。独立性/中立性を保つためには、このような事業比率は少ない方が望ましい。そういう意味で、日本のシンクタンクを米国と比べると、顧客である行政や大手企業に依存する率が多いように思う。
 
 そう思っていたら、韓国で日本のシンクタンクに関する記事が出た。野村総研を例に、韓国のシンクタンクは顧客依存が強すぎると嘆いている。日本こそそうで、野村総研に限らず大手シンクタンクはどうしても大口顧客の意に背くような提言ができないと思っていたから意外であった。
 
 
 韓国はもっとその傾向が強く、独立性/中立性に欠けるということだ。これは民間をはじめとする資金が直近ではなく中長期的なことに使われるかどうかにかかっていて、これが多いほど戦略的な思考ができる国だという指標になる。この記事を読むと、「T20」はまだ時期早尚、「T7」が精一杯のような気がする。日本社会もそれに乗り遅れないよう、戦略的であって欲しいですね。
 
<初出:2018.12>