Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

中国経済の行方(後編)

 もうひとり、学の世界の人であるB教授は、もっと辛辣だ。中国経済の拡大は頭打ち、GDPは往時2ケタ成長、いまでも6%成長というが、中国政府発表は信じていないとおっしゃる。実体経済を見ると生産設備は過剰だし、投資はすでに過多である。どの先進国でも経験した工業化段階は終わり、経済発展は踊り場にある。

 

 さらなる経済発展を望むならば、付加価値向上のイノベーションに期待が掛かる。まあ日本も「失われた20年」などと苦しんでいるように、それを成し遂げるのは難しいことも確かだ。悩ましいのは、地方政府含む政府の負債が多いこと。GDP比260%以上、リーマンショック前までは140%だったのに10年で倍近くなった。これ以上の負債を持っているのは、世界で日本だけだ。
 
 特に地方政府が苦しい、民間の邪魔をするのが仕事の公務員が多すぎて支出が多い。期待されるのは民間活力。今年習主席が民間企業代表を招いた会をしたがこれは前代未聞のことで、ようやくイノベーションには民間活力が必要と気づいたようだ。イノベーションは自由な雰囲気から生まれる、国家資本主義とは相容れない。インターネットの封止はイノベーションを阻害するのだが、政府は「管理されたインターネット」を求めている。そして、鄧小平の「改革開放路線」に立ち返るべきだと締めくくった。
 
 場内からBATJなどイノベーションが起きているのではとの問いがあったが、「中国オリジナルのイノベーションはまだまだ現われていない。BATJはGAFAの物まね、13億人の市場があるから大きくなった」とにべもない。さらに「BATJが登場したばかりの頃は、中国政府はその意味も分からず規制の仕方も知らなかったので成長できた」とまでおっしゃる。

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 ただ希望がないわけではなく「ファーウェイは立派な会社。こういう会社がどんどん出てきて欲しい」とのことだった。加えてコメントした日本の中国通の人が「中国の民間企業は、フローは目覚しいのだがストックがない。ストックはほとんど政府(系企業)が握っている」、「中国には零細企業が1億社あるという。派手にアピールしていた社長が突然消える(行方不明になる)ことも多い」というのを聞いて、内実はかなり厳しそうだと思った。政府の関与が逃れられないくらい強くなり、これ以上抵抗すると「行方不明」にされてしまうかもしれないと、アリババの馬会長は考えて引退したような気がする。
 
 2人の中国の経済専門家のおっしゃることはマトモだと思うのですが、問題は「それができるのか?」ということですね。
 
<初出:2018.12>