老舗の百貨店や石油会社、家具販売会社などで時々とりざたされる「お家騒動」。創業一家と新経営陣の意見が相違し、株主総会まで持ち込むプロキシー・ファイトが演じられることがある。古い企業ゆえのトラブルかと思いきや、このような新興企業でも起きていた。
◆クックパッド(株)
・1997年創業、2009年東証一部に上場。
・資本金52億円余、単体売り上げ約140億円/年、単体営業利益約69億円。
・事業内容 料理レシピのコミュニティウェブサイトの企画・運営。
⇒ 月間ユーザ約5,000万人、投稿レシピ約250万件。
設備投資や人的投資(従業員約260名)が少ないため、営業利益率50%という恐ろしい数字を持っている。料理のレシピという普通の主婦や料理好きの人が興味を持つ分野で、専門家ではない素人の投稿を歓迎するというインターネット経済の象徴的な企業である。それが上場から6年、株式の45%近くを保有する創業者と当時の社長以下経営陣の意見が対立、先月社長交代の発表があったが市場はこれを評価せず、株価は急落した。一時期2,000円をつけていた株価はほぼ半値になったし、社長交代発表の前日の株主総会でも、株主の不満が噴出したという。
株主総会への出席者も前年に比べて半減していて、これは出席者への「お土産」がなくなったからという意見もある。しかし株主総会の変化は、これだけではない。総会の模様を録音・録画したり、SNS等へ投稿したりするのを会社側が禁じたという。
昔ながらの株主総会というのはなるべく短く運営するのが良しとされ、総務本部長のKPIにもなっていた。株主には黙っていて欲しいということだったが、昨今は積極的に株主の意見を聴きたいという企業も出てきた。なかでもコンシューマ相手(BtoC)のビジネスをし、かつインターネットサービスを売りにしている企業であれば、ネットへの投稿禁止という経営陣の決定には納得できない。誰しも混乱する姿は見せたくないものとはいえ、株主を含むコンシューマの意見を聴かないネット企業(&経営者)に将来はないように思うのだが・・・。