Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

米軍のRe-Transformation

 昨年後半から顕著になった米中対立、単なる貿易摩擦ではなく年末には地球の覇権を争う事実上の戦争状態に突入した。ファーウェイ副会長のカナダでの拘束、企業秘密を持ち出そうとした中国人技術者の逮捕、「APT10」と呼ばれる中国のハッカー集団の告発・・・と、年末には米国側が矢継ぎ早やの攻勢に出ている。

 
 9・11テロ事件の後、米軍は「Transformation」と称して軍の再編を行った。それまで大国間戦争、いわば第二次世界大戦のような戦いを念頭に組織化されていた軍を「対テロ用」に再編したのだ。戦略核兵器が普及した段階で大国間戦争は難しくなり、非対称戦争とか「Low Intensity Conflict」という時代になっていたと専門家は言うので、遅きに失した転換かもしれない。
 
 例えば陸軍では1~2万人単位の師団という戦闘単位を、3,000人くらいの戦闘団に再編した。1個師団を投入する作戦は、対テロリストではあまり考えられない。戦闘団くらいの規模で戦力は十分だし、これならオスプレイなどで迅速に現地に展開できる。
 

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 それをこのたび、もう一度大国間戦争に備えるように再々編するようだと言うのがこの記事。例示されているのは海上戦力で、中国を海上封じ込めのために増強しないといけないが目標355隻体制にするのは難しいとの主張である。
 
 ただ中国側から見ると、現状の287隻体制でも十分すぎるほどの強敵である。直観的にだが、現状の海上戦力比率は10対3くらいではないかと思う。半分の戦力を他の地域に割り当てたとしても、米軍は5の戦力をもって中国海軍にあたることができる。この数値が当っているとすれば、戦力二乗の法則によって、実戦力は25対9。これではまともな戦いにはなるまい。
 
 355隻というのは、例によってトランプ先生が自国の製造業を意識したアドバルーンだと思う。こと海上戦力で言うならば、この記事のような心配はいらないだろう。ただ同盟国の海上戦力をちゃんと味方にできれば、という条件は付く。海上自衛隊の哨戒機に射撃レーダーを再三照射した韓国海軍は本当に味方か、という疑問もありますし。
 
<初出:2019.1>