埼玉県三芳町にあるアスクルの物流倉庫から火が出て4日になるが、鎮火のメドは立っていないと言う。事務用品・消耗品などがインターネットで注文したら直ぐに届くオフィスの「Just-in Time」に慣れきってしまった我々は、バックヤードでこれらの企業がどういう努力をしているかについては関心を持っていない。
この物流倉庫は同社で最大級の規模を持っていて、延べ床面積が72,000平方メートルある。これは東京ドームの2個弱にあたる。僕自身はこの施設を見たことはないが、小田原の酒匂川沿いにできたアマゾンの物流拠点を見て、きっとこのようなものだろうと推測している。
出火原因は不明だが、4日も燃え続けているというのが不思議に思われた。可燃物も当然あるだろうが、日本の消防能力から考えてここまでてこずるような複雑な建物とは思えなかったからだ。しかし昨夜のニュースで、
・述べ床面積が大きいわりに窓が少なく、密閉状況に近い。
・熱も煙も篭ってしまって、消防隊員が長く内部に留まれない。
・OA機器用のボンベが原因と思われる爆発も、何度か観測された。
ということを聞いて、なぜかミッドウェー海戦のことを思いだしてしまった。
密閉状態の格納庫には、航空燃料などの可燃物、爆弾・魚雷・機銃弾などの爆発物もある。爆発と引火で火の勢いは納まらず、後に被弾した「飛竜」も含めて帝国海軍は主力4空母を失うことになった。対する米軍は、一度爆撃で中破した「ヨークタウン」が魚雷を受けて沈んだのが空母の唯一の損失だった。火災は鎮火させたものの、潜水艦に遭遇してしまったのが不運だった。
日米の艦艇設計思想には大きな違いがある。米軍は「軍艦とは被害を受けるもの」と考えてダメージコントロールを重視する。それゆえ空母甲板下の格納庫は、オープンハンガーになっている。舷側が空いているので、通常は海水が入ってきたり格納庫からの転落事故も起きやすい。それでも格納庫内で燃え上がった航空機を舷側から投棄する耐久性を優先させたわけだ。結果として火災だけで沈んだ空母は、米軍にはない。
倉庫も空調や保管品の維持、防犯などを考えると、開口部は小さいほど良い。しかし非常時にはこれがマイナスに働くことは考えておく必要があるだろう。もちろん「倉庫とは被害を受けるもの」などとは言いませんがね。
<初出:2017.2>